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3月9日  【A3】

第2章 河津桜


 「ほぇー…」

 大きな三角屋根のお家、ここがMANKAIカンパニーの劇団員寮。

 「ようこそ、MANKAIカンパニーへ!」

 ででーんっと、大きく両手を広げてアピールしてくる。
 みた感じ立派な建物で、外観は綺麗に見える。

 生え散らかった雑草は見ないふりして、中はきっとと少し期待している。

 20人ちょっと所属している割に、声がしないっていうのはきっと今日も稽古で劇場に行ってるとかそんなところかな?

 などと考えつつ、松川さんが玄関のドアに鍵をさしているのを見ていた。

 思えば、そんな違和感はあった。

 それから、こんな立派な寮があってそれなりに人手があるなら、もう少し松川さんのフォローしてあげればいいのに…とか。

 「団員として所属してくれたら、もっと良かったんですけど…
 まぁ、MANKAIカンパニーは元々男性のみで構成していたので、それも無理なんですけど…」

 松川さんのこの言葉の意味とか…。

 「え…?」
 「まぁ、とりあえず入ってください!お茶淹れますね!」
 「その前に、劇団員の方々にご挨拶を」
 「あぁ、大丈夫ですよ!今はもう私と…」

 鍵をガチャっと開けドアを開けるとバサバサと飛び出てきた何かが視界を埋める。

 「イスケ!オレの酒買ってきたカ?」

 鳥?
 …え、鳥?

 「この亀吉しか居ませんから!」

 ドヤ顔の支配人と、亀吉?に固まってしまった私。

 計画が、

 …いや、シタゴコロが崩れ落ちていくのを、どこかで感じた私。

 現実逃避のように考えたのは、なぜか目の前の鳥のこと。

 鳥なのに亀吉?
 ピンクなのに亀吉??

 っていうか、団員というより団鳥だけど。
 鳥って話せるっけ?
 って、鳥が飲むお酒とは…

 「ってなわけでよろしくお願いしますね!さ、はいってくださーい!」

 …正気か?

 「ぅえ、あ、あの、松川さん!待って!」

 慣れたように靴を脱いで、私をそのままそこに置いていこうとするから。

 「〜〜お邪魔します!」

 ニコニコ笑いながら入っていく1人と一匹についていく。


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