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3月9日  【A3】

第8章 椿寒桜


 2人の視線が向いたから、慌てて答える。

 「あ、いえ…ごめんなさい。想像してた"おみちゃん"さんより、大分男らしくてかっこいいと思ったので」

 失礼と思いつつ素直に言うと、優しく笑ってくれた伏見さん。

 「ははは。おばあちゃん、俺のことなんて説明したんですか?」
 「すごく優しい子、笑顔がかわいいって言うのはそのままだと思ったんですけど」
 「そうでしょう?」

 おばあちゃんは得意げだった。

 「小さい頃からお料理も頑張っててえらい、手先が器用、たまに手芸をおしえてあげるって言う説明をうけて、うちの劇団の椋くんとか月岡さんを想像して…って、あの、なんだろうゆるふわな感じを想像してしまいまして」

 2人の姿をそうぞうしつつ、この2人があの2人に会ったことって…月岡さんはともかくとして。

 「下に小さいのがいて、たまたま面倒を見ているうちに身についたんだ。ゆるふわ?じゃなくてすみません」

 揶揄うように言った伏見さん。

 「いえ、そんな!!偏見でした、すみません。私も劇団員の寮でお料理とか手芸とか家事をするので、またの機会にでもお話聞かせてください」
 「あぁ。もちろんです。」

 …ひえっ、
 ガチムチ天使。

 「そうだ、受け取りの時間もうすぐですよね。私下行ってますね。
 伏見さん、ごゆっくりして行ってくださいね」

 時計を見るともう大分時間が経っていたことに気づいて、そう声をかけ、ペコっと会釈をする。

 「ありがとうございます。
 それじゃあ…おばあちゃん、本題にうつりましょうか。」

 同じくまた優しい笑顔で送り出してくれた2人の声を背中に、お店に出る。

 「げ。」

 店に降りると、いつかのようにいた飛鳥晴翔こと、山田玄太。

 「こっちのセリフじゃ、ボケ!」

 まぁ、そうだよね。

 「いらっしゃいませ。ご注文されていた品、こちらでお間違い無いでしょうか?」

 …ならば、お互いのためにここはやり過ごそう。

 「えっ、あぁ。うん」
 「お会計は、お済みですね。中にお水が入っておりますので、こちらを上に向けて気をつけてお持ちください。ありがとうございました。」

 春翔の動揺に気づかないふりして、いつもに増してテキパキと対応する。
 後半に関しては、若干早口だったかもしれない。



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