第8章 椿寒桜
2人の視線が向いたから、慌てて答える。
「あ、いえ…ごめんなさい。想像してた"おみちゃん"さんより、大分男らしくてかっこいいと思ったので」
失礼と思いつつ素直に言うと、優しく笑ってくれた伏見さん。
「ははは。おばあちゃん、俺のことなんて説明したんですか?」
「すごく優しい子、笑顔がかわいいって言うのはそのままだと思ったんですけど」
「そうでしょう?」
おばあちゃんは得意げだった。
「小さい頃からお料理も頑張っててえらい、手先が器用、たまに手芸をおしえてあげるって言う説明をうけて、うちの劇団の椋くんとか月岡さんを想像して…って、あの、なんだろうゆるふわな感じを想像してしまいまして」
2人の姿をそうぞうしつつ、この2人があの2人に会ったことって…月岡さんはともかくとして。
「下に小さいのがいて、たまたま面倒を見ているうちに身についたんだ。ゆるふわ?じゃなくてすみません」
揶揄うように言った伏見さん。
「いえ、そんな!!偏見でした、すみません。私も劇団員の寮でお料理とか手芸とか家事をするので、またの機会にでもお話聞かせてください」
「あぁ。もちろんです。」
…ひえっ、
ガチムチ天使。
「そうだ、受け取りの時間もうすぐですよね。私下行ってますね。
伏見さん、ごゆっくりして行ってくださいね」
時計を見るともう大分時間が経っていたことに気づいて、そう声をかけ、ペコっと会釈をする。
「ありがとうございます。
それじゃあ…おばあちゃん、本題にうつりましょうか。」
同じくまた優しい笑顔で送り出してくれた2人の声を背中に、お店に出る。
「げ。」
店に降りると、いつかのようにいた飛鳥晴翔こと、山田玄太。
「こっちのセリフじゃ、ボケ!」
まぁ、そうだよね。
「いらっしゃいませ。ご注文されていた品、こちらでお間違い無いでしょうか?」
…ならば、お互いのためにここはやり過ごそう。
「えっ、あぁ。うん」
「お会計は、お済みですね。中にお水が入っておりますので、こちらを上に向けて気をつけてお持ちください。ありがとうございました。」
春翔の動揺に気づかないふりして、いつもに増してテキパキと対応する。
後半に関しては、若干早口だったかもしれない。