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3月9日  【A3】

第8章 椿寒桜


 無事オーディションを終えて、私は一足先に寮に戻って夕飯の支度をすすめる。

 「ただいまー」

 ご飯が炊けた頃、みんなが帰ってくる。

 「お帰り。…あれ?4人は?」
 「引っ越しは来週だそうです」

 咲がニッコリ笑って答えてくれる。

 「オレも夕飯の用意手伝わせてくださいっ」
 「うんっ」

 …あれ?咲なんか変。

 「どうかしました?」

 ううんっと首を振る。
 気のせいか、…。

ーーーーーー
ーーーー
ーー


 そして、引っ越しの日。

 「イェーイ。今日からここがオレの家っと!」

 入った瞬間から写真を撮りまくって、ニコニコしてるカズくん。
 …小型犬みたい。

 皇くんと幸くんはすぐに喧嘩を始めてるし、向坂くんはふわふわしてる。

 「向坂くん」
 「酒井さん!
 改めて今日からよろしくお願いしますっ向坂椋です!」

 あれ、天使が笑ってる…?

 「向坂くん可愛いね、…じゃなかった。よろしくね。」
 「可愛いなんて、そんな!酒井さんの方が可愛くて素敵です!僕なんてみそっか」

 また謎のマイナス思考モードに入ろうとするから、一旦止める。

 「ストップストップ!」
 「…はい」

 しゅんっとしてる。
 …か、かわいい。

 「ふふ。向坂くんは好きな食べ物ある?」
 「椋でいいですよ、酒井さん!僕はチョコレートが好きです、甘くて美味しくて幸せな気持ちになりますよね!」
 「そっかそっかぁ。なら、私も芽李って呼んでくれるかな?」
 
 いやいや、ホワホワな笑顔を見せられてこっちが甘く幸せな気分になるわ。

 「はいっ」
 「芽李顔酷いことになってるよ。」
 「うるさいです、干物オタク。」
 「辛辣。パパはそんな子に育てた覚えありません」
 「育てられた覚えないです」
 「ママ、芽李が反抗期なんだけど。」

 気づくと家族エチュードが始まるから、困ったもんだ。
 至さんもお芝居にはまってきた証拠なんだろうけど。

 …って、天使と向き合ってたんだ。

 「ふふ、仲良しさんなんですね。
 僕とも仲良くなってくれますか?」
 「ひょっ」

 可愛すぎて変な声出てしまった。

 「椋くん、部屋決めるって。」

 少し冷たさを感じるような、完璧なニッコリ笑顔で呼びにきたのは咲。

 「?」
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