第8章 椿寒桜
無事オーディションを終えて、私は一足先に寮に戻って夕飯の支度をすすめる。
「ただいまー」
ご飯が炊けた頃、みんなが帰ってくる。
「お帰り。…あれ?4人は?」
「引っ越しは来週だそうです」
咲がニッコリ笑って答えてくれる。
「オレも夕飯の用意手伝わせてくださいっ」
「うんっ」
…あれ?咲なんか変。
「どうかしました?」
ううんっと首を振る。
気のせいか、…。
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そして、引っ越しの日。
「イェーイ。今日からここがオレの家っと!」
入った瞬間から写真を撮りまくって、ニコニコしてるカズくん。
…小型犬みたい。
皇くんと幸くんはすぐに喧嘩を始めてるし、向坂くんはふわふわしてる。
「向坂くん」
「酒井さん!
改めて今日からよろしくお願いしますっ向坂椋です!」
あれ、天使が笑ってる…?
「向坂くん可愛いね、…じゃなかった。よろしくね。」
「可愛いなんて、そんな!酒井さんの方が可愛くて素敵です!僕なんてみそっか」
また謎のマイナス思考モードに入ろうとするから、一旦止める。
「ストップストップ!」
「…はい」
しゅんっとしてる。
…か、かわいい。
「ふふ。向坂くんは好きな食べ物ある?」
「椋でいいですよ、酒井さん!僕はチョコレートが好きです、甘くて美味しくて幸せな気持ちになりますよね!」
「そっかそっかぁ。なら、私も芽李って呼んでくれるかな?」
いやいや、ホワホワな笑顔を見せられてこっちが甘く幸せな気分になるわ。
「はいっ」
「芽李顔酷いことになってるよ。」
「うるさいです、干物オタク。」
「辛辣。パパはそんな子に育てた覚えありません」
「育てられた覚えないです」
「ママ、芽李が反抗期なんだけど。」
気づくと家族エチュードが始まるから、困ったもんだ。
至さんもお芝居にはまってきた証拠なんだろうけど。
…って、天使と向き合ってたんだ。
「ふふ、仲良しさんなんですね。
僕とも仲良くなってくれますか?」
「ひょっ」
可愛すぎて変な声出てしまった。
「椋くん、部屋決めるって。」
少し冷たさを感じるような、完璧なニッコリ笑顔で呼びにきたのは咲。
「?」