第8章 椿寒桜
ギンギンの目で睨んでくる彼に、酒井ですと春組のみんなにした時のように自己紹介しようとした時、咲が私を隠すように前に出て凛とした声で言った。
「この人は、酒井芽李さんっていってオレたちのサポートしてくれてるんだよ。
美味しいご飯作ってくれたり、話聞いてくれたり。」
…咲?
圧がすごいな?
ニッコリと笑ってるけど、逆にそこが怖い。
「そーそ、寮母さん。」
そんな咲を宥めるようにポンっと咲の肩に手を置いた至さん。
「さ、その辺にしようか。
つぎ天馬くん、お願い」
そんな2人を見て、促したいづみちゃん。
幸くんは、天馬くんを煽ってる。
「…」
ふっと視線を下ろして、空気を作る皇くん。
一瞬で持っていかれる。
『おはよう』
たった一言に感情が篭ってる。
みんな言葉を失ってる。
「テンテン、すげー……!」
「やっぱり本物の役者さんは違いますね!」
「当たり前だ」
「普通。」
幸くんを除いて、…か。
みんなの演技が終わって、いづみちゃんがみんなに合格を伝える。
すかさず文句を言ってる皇くん。
幸くんと喧嘩になってるし…
「末はニコイチ、ケンカップルか。男の娘、流行りだし。」
至さんがいつの間にかゲームを辞めてニッコリ笑ってる。
そんな場合じゃないと思うんだけど…
シトロンくんものってるし。
ツッコミを入れる綴くんの喉が心配になる。
また始まりそうになった口喧嘩を、止めたのはいづみちゃん。
さすが、監督。
「はいはい、そこまで!
定員割れしてるし、時間もないので、全員合格って言うのは確定。
それで不満があるなら、天馬くんには辞退してもらうしかないけど……どうする?」
皇くんをうまく宥めた。
そのあと、皇くんに入団希望の理由を聞いたいづみちゃんに本格的な舞台経験がなく演技の幅を広げたいと答えていた彼に、思っていたよりも素直な子らしいと言う印象を持つ。
目が揺らいだことも気になるし、後でちょっとお話でも出来ればいいんだけど。
…………前言撤回。
辛辣な言葉にむすっとしたい気持ちだ。
「ロミジュリ観に来てくれたんですね!ありがとう!」
そんな皇くんを物ともせず喜んでみせる私の弟。
優しすぎるし、圧倒的天使感だ。