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3月9日  【A3】

第7章 豆桜


 「メイはわかりやすいネ。」
 「え?」
 「イタル、きっと隠してる思うネ。ワタシも様子みるネ、ダイジョウブヨ、2人で見ておくネ。」
 「あ…」
 「気にしすぎてダイチョウ悪くなったら、大変ネ。それ飲んだら、ゆっくり休むヨ」 
 「ありがとう、シトロンくん。」

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 結局至さんに聞けないまま本番を迎えた。

 隠すのが上手な至さんはなかなか隙も見せてくれなくて、
 …はぁ。

 ガチャっと控え室のドアを開けると、着替えたみんなと左京さんが対峙している。

 「いえ、最初に思っていたより、ずっと面倒見が良い人だなって」
 「ー…ふん。行くぞ、迫田。」
 「あいあいさー!」
 「…いたのか、佐久間。」

 良い感じの雰囲気だったのにとんでもない爆弾落としてくれたな、この人。
 私を佐久間と呼んだことに気づいたせいか、その場にいた人達と目が合う。

 「や、やだなー!酒井ですよ!」

 あはは、だなんて。
 下手な誤魔化しをしてるというのに、フッと笑みを浮かべた。

 「そうか、……今日の劇場は、昔を思い出すな」

 いづみちゃんに優しい目を向けてる。
 …?

 スタッフの開場のアナウンスを聞いて、もう一度歩き出した左京さん。

 いづみちゃんも左京さんのこと見てたな…。

 「俺たちも行きますか。」

 咲の声にみんなが反応する。
 よかった、佐久間って呼ばれた時みんなと目があった気がしたのは、気のせいだったかもしれない。
 ホッと胸を撫で下ろして、みんなについていく。

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ーーー

 「メイ、お願いあるよ。」
 「ん?」

 コソッと言ってきたシトロンくんに耳を傾ける。

 「例の、用意しておいてほしいネ。」
 「じゃあ、やっぱり至さん…」
 「無理はしないって約束したから、ダイジョウブ、信じてほしいヨ」
 「…わかった。」

 いづみちゃんに席を外すことを伝え、”例のもの"を用意する。
 大丈夫って言われても心配で仕方ない。
 …だからと言って、してあげられることなんてないに等しいんだけど。

 舞台裏には、アイシングと救急箱。
 いつでも手当てできるようにスタンバイしておく。

 どうか、うまく行きますように。

 千秋楽の幕が開く…ー
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