第7章 豆桜
「メイはわかりやすいネ。」
「え?」
「イタル、きっと隠してる思うネ。ワタシも様子みるネ、ダイジョウブヨ、2人で見ておくネ。」
「あ…」
「気にしすぎてダイチョウ悪くなったら、大変ネ。それ飲んだら、ゆっくり休むヨ」
「ありがとう、シトロンくん。」
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結局至さんに聞けないまま本番を迎えた。
隠すのが上手な至さんはなかなか隙も見せてくれなくて、
…はぁ。
ガチャっと控え室のドアを開けると、着替えたみんなと左京さんが対峙している。
「いえ、最初に思っていたより、ずっと面倒見が良い人だなって」
「ー…ふん。行くぞ、迫田。」
「あいあいさー!」
「…いたのか、佐久間。」
良い感じの雰囲気だったのにとんでもない爆弾落としてくれたな、この人。
私を佐久間と呼んだことに気づいたせいか、その場にいた人達と目が合う。
「や、やだなー!酒井ですよ!」
あはは、だなんて。
下手な誤魔化しをしてるというのに、フッと笑みを浮かべた。
「そうか、……今日の劇場は、昔を思い出すな」
いづみちゃんに優しい目を向けてる。
…?
スタッフの開場のアナウンスを聞いて、もう一度歩き出した左京さん。
いづみちゃんも左京さんのこと見てたな…。
「俺たちも行きますか。」
咲の声にみんなが反応する。
よかった、佐久間って呼ばれた時みんなと目があった気がしたのは、気のせいだったかもしれない。
ホッと胸を撫で下ろして、みんなについていく。
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「メイ、お願いあるよ。」
「ん?」
コソッと言ってきたシトロンくんに耳を傾ける。
「例の、用意しておいてほしいネ。」
「じゃあ、やっぱり至さん…」
「無理はしないって約束したから、ダイジョウブ、信じてほしいヨ」
「…わかった。」
いづみちゃんに席を外すことを伝え、”例のもの"を用意する。
大丈夫って言われても心配で仕方ない。
…だからと言って、してあげられることなんてないに等しいんだけど。
舞台裏には、アイシングと救急箱。
いつでも手当てできるようにスタンバイしておく。
どうか、うまく行きますように。
千秋楽の幕が開く…ー