第7章 豆桜
「えー…」
駄々っ子になる2人にどうしたもんかと思っていると、ドアが開いた。
救世主はやっぱり、いづみちゃんと咲。
「おはようございます!何の話ですか?」
朝からポワポワと花を飛ばす咲。
朝からうちの弟が1番可愛い。
「サクヤとカントクに聞いてほしいネ。ツヅルばっかりずるいんだヨ」
「髪セットしてって頼んだらすごく拒否られて、至さん今日ティボルトなれないかもしれない」
「えぇ!?それは大変です!」
あわあわし出す咲に、2人のわがままをどうしたもんかといづみちゃんを見れば、ポンっと手を叩くのが目に入る。
「いいんじゃないかな、今日会場整理もお願いしてたけど…支配人もいるし、雄三さんたちも手伝いに来てくれるって言ってたし、芽李ちゃん、控室おねがいできるかな?」
ニコニコとした中に、この場を収めようと圧力をかけてくる。
滲み出てる、この2人めんどくさいからあとはよろしくって顔に書いてある。絶対。
「演出してる監督さんが言うんだから、折れてよ、芽李」
ソファに座ってるのをいいことに、顔を武器に上目遣いで見てくるインチキエリートとインチキ外国人。
「…差し入れに豚足と魚卵入れてやる」
「そんな説法ナ…」
「殺生とみた。って言うのはさておき、いいじゃん俺たちの志気があがれば、芽李とお客さんになおさらいい舞台見せられる気がするんだけど。ねぇ、咲也」
至さんの視線の先に咲のぱあっとした表情が目に入る。
「オレも、酒井さんにセットしてもらいたいです!」
「任せて」
「チョロ」
っと一言、余計なことを言ってくる至さん。
否めないけど、差し入れのおにぎり具材はすじこと、いくらと、たらこと、数の子にしてやろうと企む。
子持ち昆布もいれてやろ。魚卵もりだくさんにしてやろ。
ゲシゲシと、完成された至さんの頭を嫌がらせ程度にボサボサにしてやる。
「明日からはジブンでスルヨ。今日だけワタシたちの背中押して欲しいネ。初舞台緊張スルヨ、だめネ?」
そんなことをしていると、情に訴えてくるシトロンさん。
…彼にも、やっぱり勝てない。
「私でよければ、でも絶対監督と綴くんに最終チェックして貰うからね。」
「お手柔らかに」