第7章 豆桜
「じゃあ、私ご飯作ってくるからね」
と、声をかけるとぴょこっと触覚が揺れる。
ブランケットを見ながら、元々彼がここで休もうとしてたのかと考えながら、なるべくうるさくならないように作業を始める。
ある程度材料を切り終えた頃、ぎいっとソファの軋む音が聞こえて。
目線を上げると、ソファに置かれたクッションを枕に横になったのが見える。
もちろんちゃんと、ブランケットを掛けて…
テーブルの上に置いてあるコップを片付けたのは、彼の静かな寝息が聞こえてきた頃。
同じタイミングできたのは、少しだけ寝癖がついた綴くん。
「…くぁっ、…ん、はよっす。」
眠いのか、覚えのない表情にいつもよりも幼く見える。
隣に並んだ彼におはようと返しつつ、少しだけ寝癖ついてるよと教えてあげると直してくださいと、これまた寝ぼけつつコトッと背中越しに肩の上に重みがくる。
クビに感じたフワッとした綴くんの髪にくすぐったく思いながら、覚醒したらすごく照れるんだろうと思って。
ちょうどいいタイミングだったこともあって、椅子の方に移動するよう伝えると、案外すんなりと頭が離れた。
寝ぼけてても物分かりがいい綴くんに、やっぱりお兄ちゃんだとおもいながら、手を洗ってクシとアイロンを取りに洗面所に向かう。
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ーー
「何これ、どんな状況?」
「メイ、ヘアマネジメントしてるネ」
「もうそこまでくると、俺でも解読不可。ヘアアレンジってこと?」
綴くんの髪をいじっていると、次に起きてきた2人に今日は咲が最後かと思いながら、おはようと返す。
「ヘアアレンジってほどじゃないよ、寝癖がついてたから治してあげてたの。頼まれたから」
そう伝えると2人して顔をあわせて、綴くんの両脇に座った。
「つぎワタシの番ネ」
「俺もその次予約」
「番も予約も君たち寝癖ついてないじゃん」
「じゃあ、本番前のセットメイがするヨ」
「ナイスアイデア、シトロングッジョブ♪」
「いやいやいやいやいや、無理。私そんな大層な役目無理。」
しょぼんとした2人の肩をみつつ、寝癖の直った綴くんの頭を優しく撫でると恨めしそうに私を見てくる。
「カントクに言い付けてやるネ、ツヅルが良くてワタシたちダメなの納得いかないヨ」
「俺も咲也に言い付けてやる」