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3月9日  【A3】

第7章 豆桜


 美味しいと言って、フワッと笑った彼に

 「それ、何入ってると思う?」

 と、少し意地悪な質問をしてみる。

 「…蜂蜜、…シナモン、…あと、何入れたの?」
 「魔法の粉」
 「魔法?……至みたいなこというな」
 「ははは、うつっちゃったかな。」

 怪訝そうな顔をしている真澄くんだけど、さっきよりは表情が明るくてホッとする。

 「…あんたは、至が好きなの?」
 「へ?」
 「言葉うつるくらい、好きなんじゃないの」

 意外と可愛いことを言うもんだと感心しながらその言葉に返す。

 「至さんも、真澄くんも、カンパニーのみんなのこと大好きだよ。」
 「そうじゃなくて、」

 納得しない表情の真澄くんにまぁ、そうだよなと思いながらも、
彼の隣に腰掛けて言う。

 「うん、まぁでも…、おまじないはかけたよ。真澄くんが風邪をひかないで、ゆっくり休めますようにって。」
 「…俺、」
 「ん?」
 「…監督に、俺だけをみて欲しくて」

 熱を帯びた声に、そのまま耳を傾ける。

 「アイツにだけ褒めて欲しくて、でもそれを言ったら…俺自身の成長につながる目標を持てって」

 …なるほど。

 「俺は、アイツが好きで、好きで…だから、してるのに。
 …おれ、間違ってる?」

 語尾に行くに向けて萎んでいく、彼になんて伝えれば響くだろう。

 「間違ってるかどうかは、分かんないけど…いづみちゃんが大好きってことは伝わってきた」
 「…」
 「でも、いづみちゃんだって真澄くんが大切だから、いづみちゃんが大好きな演劇と向き合ってくれてる真澄くんだから、ちゃんと真澄くんにも演劇を好きになってもらいたいんじゃないのかな。とも、思った。」

 様子を伺いながら、言葉をつなげる。

 「…芽李は、どうすればいいと思う?」
 「私?」

 …ふむ。

 「成長できる目標を持って欲しいって言われたならさ、その人は私に成長できる伸びしろがあるって信じてくれてる、ってことなのかなって思うんだけど」
 「…」
 「好きな人が信じてくれてるなら、百万馬力だよね。
 ってことで、一旦いづみちゃんと演劇を離して考えた時に演劇とどう向き合うかって言うのを考えてみるって言うのもありなのかな…んー、真澄くんは?」
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