第7章 豆桜
それから少しした後、
「迫田さん何時くらいに着くんですか?」
「アイツにも仕事を頼んでるからな、終わり次第連絡が来ることになってる。」
「そうですか、…あ、もうすぐみんなも稽古場に入る頃だと思うので左京さんも一緒にいきましょう?」
コーヒーカップが空になるのを見計らって声をかけた6時半。
今日の朝稽古は7時からで、みんなは多分それより早く入るだろうから。
左京さんがうなづいてくれたから、私はカップを片付けて一緒に稽古場までいく。
「って、あ。」
稽古場のドアの前で、ドリンクを用意し忘れていたことに気づく。
「左京さん、先に入っててください!みんなもくると思うのでっ
ドリンクを用意し忘れてたので私やってきます!」
返事も聞かず慌ててキッチンへと逆戻り。
少しだけ後悔したのは、そのドリンクを用意し終えた時。
なかなか色が出ない麦茶と、粉から作るスポーツドリンクと格闘しよし運ぼうと意気込むと、またキッチンのドアが開く。
「…ごめん!ドリンク作り忘れて!すぐ持って…左京さん」
「悪いな、迫田がついたみたいだ。」
「そうですか。…あ、じゃあお見送りを!」
「いや、いい。ドリンク持ってってやれ。またな、佐久間」
久しぶりに呼ばれたその苗字に、どこか懐かしさを感じるのが変な感じがする。
「はい!」
"また"って、声をかけてくれたのが嬉しいなんて、変なの。
左京さんをキッチンで見送り、私はそのまま稽古場へ向かう。
「おはようございます!…って、みんな早いね?」
何やら神妙な面持ちで、
中央部分にいるみんなに、
いつもならもう少し遅くくる至さんまでいることに、違和感を覚えつつ、定位置にジャグを置く。
「おはようございます!酒井さん!」
咲を筆頭にみんなが声をかけてくれる。
「そういえば、さ」
「おつピコー!」
左京さんと言うワードを出そうとした時、後ろから元気いっぱいなカズくんの声が聞こえて言葉を止めた。
そして、少しうんざりしながら対応する綴くんを気にも留めず、明るくぐいぐいいくカズくんはほんと強いな…なんて思ってるとすごいワードが出てくる。
「あ!いいこと思いついたわ!テレビ!テレビ出ればいいじゃん!」