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3月9日  【A3】

第1章 寒桜


 空港からまず、大きな駅に向かう電車に乗った。

 それからしばらくして、終点地点となり電車を降り、構内からでる。

 ちょうどいいバスがあれば、バスに乗り換えようと時刻表を見る。

 「さてと、このバスに乗ろうかな…終点は、」

 天鵞絨町?

 「なんて読むんだろう、コレ。てん?」

 恥ずかしながら初めて見る字だった。

 「びろーど」

 少し鼻にかかった声。
 優しくて、太陽みたいな声。

 「へ?」

 その声に振り返ると、金色の髪が日に照らされてキラッと反射する。

 「びろーどちょうって読むんだよ、書いてあるっしょここに。
 ローマ字で。」

 見た目の派手さが気にならないほど、優しく丁寧に教えてくれるから、なんていい人なんだろうと思いかける。

 「あ、ほんとだ」
 「見逃しちゃった感じ?
 おねぇさん、かわいいね!名前なんて言うの?」

 「は?」

 「オレは〜」

 思いがけない言葉に、私は呆気に取られる。

 「カズ、ナンパしてないで早く行くぞ!」

 カズと呼ばれたその子は、集団に目を向けていた。

 「うぃうぃ♪ごめーん、んじゃぁ、また今度!
 友達に呼ばれちゃった♪
 んじゃねぇ♪」

 嵐みたいだったなぁ。
 今の若い子。

 天鵞絨、町、

 「びろーどちょうか。」

 ひとまず、今回の拠点はそこにしようと思い立ちバスを待つ列に並ぶ。


 バスが到着したのはそれから5分もしないでだった。
 プシューッとバスが鳴いて、乗り込む。

 「待ったー!乗ります!乗りますぅー!!」

 凄い勢いでバスに乗り込んできたのはメガネをかけた天然パーマの男性。
 ヘロヘロの、つぎはぎのスーツ?をきて両手には大量の荷物。

 汗すご。

 あまりにも大変そうで声をかけてしまったのはきっと不可抗力。

 「大丈夫ですか?」

 「え、」

 ハンカチを差し出せばボロボロと泣き出す始末。

 「ごんなに、やざじいひどがいるだなんでぇえ」

 …よほどのことがあったんだろう。

 「えーっ…と?」

 「だずげでぇぐださいぃ」

 「話は聞きます、まず泣き止みましょ?ね?」

 「わたしは、松川伊助というもので、MANKAIカンパニーという劇団の支配人をしていて………」

 「劇団?!…なるほど、だからあの荷物。」

 「はぃい」

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