第1章 寒桜
空港からまず、大きな駅に向かう電車に乗った。
それからしばらくして、終点地点となり電車を降り、構内からでる。
ちょうどいいバスがあれば、バスに乗り換えようと時刻表を見る。
「さてと、このバスに乗ろうかな…終点は、」
天鵞絨町?
「なんて読むんだろう、コレ。てん?」
恥ずかしながら初めて見る字だった。
「びろーど」
少し鼻にかかった声。
優しくて、太陽みたいな声。
「へ?」
その声に振り返ると、金色の髪が日に照らされてキラッと反射する。
「びろーどちょうって読むんだよ、書いてあるっしょここに。
ローマ字で。」
見た目の派手さが気にならないほど、優しく丁寧に教えてくれるから、なんていい人なんだろうと思いかける。
「あ、ほんとだ」
「見逃しちゃった感じ?
おねぇさん、かわいいね!名前なんて言うの?」
「は?」
「オレは〜」
思いがけない言葉に、私は呆気に取られる。
「カズ、ナンパしてないで早く行くぞ!」
カズと呼ばれたその子は、集団に目を向けていた。
「うぃうぃ♪ごめーん、んじゃぁ、また今度!
友達に呼ばれちゃった♪
んじゃねぇ♪」
嵐みたいだったなぁ。
今の若い子。
天鵞絨、町、
「びろーどちょうか。」
ひとまず、今回の拠点はそこにしようと思い立ちバスを待つ列に並ぶ。
バスが到着したのはそれから5分もしないでだった。
プシューッとバスが鳴いて、乗り込む。
「待ったー!乗ります!乗りますぅー!!」
凄い勢いでバスに乗り込んできたのはメガネをかけた天然パーマの男性。
ヘロヘロの、つぎはぎのスーツ?をきて両手には大量の荷物。
汗すご。
あまりにも大変そうで声をかけてしまったのはきっと不可抗力。
「大丈夫ですか?」
「え、」
ハンカチを差し出せばボロボロと泣き出す始末。
「ごんなに、やざじいひどがいるだなんでぇえ」
…よほどのことがあったんだろう。
「えーっ…と?」
「だずげでぇぐださいぃ」
「話は聞きます、まず泣き止みましょ?ね?」
「わたしは、松川伊助というもので、MANKAIカンパニーという劇団の支配人をしていて………」
「劇団?!…なるほど、だからあの荷物。」
「はぃい」