• テキストサイズ

3月9日  【A3】

第6章 丁子桜


 どうやってここまで来たんだっけ…

 トボトボと歩いてたどり着いた場所は見たこともない場所で、あれから晴翔は帰れたのかと心配になる。
 ちなみに私は絶賛迷子中だ。

 よりによって、携帯の充電も切れていて最近じゃ公衆電話も見つからないし、せめて駅まで行ければ…

 「ひぃっ」

 今日はとことんついてないらしい。
 よくわからん道の先で、誰か倒れてるのが目にはいる。

 チョンチョンと触ってみる。

 「…いきてます?」

 変なところで発揮する度胸、よく見れば咲と同じ制服?
 …ってことは高校生?

 「ん…っ」

 くぐもった声に思わずビクッとする。

 「大丈夫?って、口切れちゃってる」
 「…んた、ダレ?…!!兵頭!!」
 「ん?」

 勢いよく起き上がったせいかふらついたその子を抱きとめる。
 よく引き締まった体ですこと…って、これセクハラ?てゆーか重くない?

 「っ痛…あのやろう、ぶっ殺す」

 物騒な子だな、うちの子がこうなってたら姉ちゃん困ってたわ。

 「どーどー、とりあえず落ち着こうか?はいひっひっふー」
 「それ、産む時だから。典型的なボケすんなよ、こっちはあちこちいてぇんだよ。」
 「そっかそっか。立てる?」
 「つか、アンタ誰だよ」
 「いやいや、人に名前聞く前に自分から名乗ってよ。歳上はうやまわやわなんだっけ?」
 「敬う、だろ」
 「そうそう、敬わなくっちゃ!…って、綺麗なおめめで睨むのやめて?ちゃんと言うから、体重そんなにかけてこないでー。」

 あれ、私この子と面識あったっけ?

 いや、ないな。…なんだこの距離感。

 「佐久間芽李、成人過ぎて絶賛迷子中の可哀想な大人ですよ。MANKAIカンパニーって知らない?」
 「さぁ、…」
 「そーだよね、有名だったらよかったー」
 「そこがアンタの家?」
 「そうそう、劇団の団員寮にすんでるんだ。君は?」
 「バンリ」
 「どういう字書くの?」
 「万に里で万里」

 話してみると、案外普通の子だと思った。
/ 553ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp