第6章 丁子桜
グイッと、晴翔の胸ぐらを掴む。
「は?え?何、芽李…」
「…で?なんでアンタにそんなこと言われなきゃいけないの、なんで?
晴翔は、私が知ってる晴翔は!人が傷つくこと平気で言わないもん!謝って!今すぐ!
私の大好きなみんなを、ばかにしないで!
晴翔のこと、大好きな友達だと思ってたのに!」
呆気にとられるみんなに、喧嘩かと騒ぎ出す町の人たちに一気に冷静になってく。
こんなの、カンパニーにもゴット座にも迷惑かけちゃう…
ゆっくりと手を離して、晴翔の首元によった皺を直す。
「…っはい、というわけで!これにてストリートACTを終わります!ありがとうございました!
さぁー、晴翔!帰って練習!!いやー、今日もあれだね、上手くいったね!」
ストリートACTかぁと、チラホラ聞こえる声に少し安心する。
もちろん怪しまれる声も聞こえてきたけど。
あの場に残してきたみんなには申し訳ないとは思う。
ぐいぐいと腕を引っ張る私についてくる晴翔は、呆れて何も言えないのかただついてくるだけ。
「ー…ねぇ。」
天鵞絨町を抜け、しばらく歩いた先でやっと声をかけてきた晴翔。
それでも無視して歩き続ける。
「ねぇってば!」
ピタッと足を止める。
「なにあれ。あんな演技、…下手すぎ。
僕まで巻き込まないでよ、」
「私だって、MANKAIカンパニーに迷惑かけたくなかったもん!」
喧嘩なんてほんとは嫌いなのに。
「でも、他にやりようあった?絡んできたのは晴翔の方じゃん、むしゃくしゃしてたのかわかんないけど、大好きな友達が私の大切な人達のこと貶すのみてられなかったんだもん!!」
「なんだよ、それ。さっきから、」
「なにって、」
「ムカつくんだよ!大好きな友達って、なんだよ!!」
晴翔の声が静かなこの場所によく響く。
ここが大通りじゃなくてよかったと、どこか冷静に思ってる自分もいる。
「何でそこにキレるかわかんないんだけど。じゃあ、大っ嫌いって言えばいいの?」
「そんなこと言ってないだろ!」
「晴翔は私のこと大嫌いかもしれないけど、私は大好きだもん。」
幼稚な喧嘩に自分でさえ呆れてくる。