第6章 丁子桜
「メイには、ワタシのニホンゴ稽古して欲しいネ」
「ん、いいよ。台本、」
「台本いらないヨ、2人見ながらでいいネ」
トコトコと私の隣に椅子を持ってきて腰掛けるシトロン君。
「サクヤもマスミもいい感じネ。朝からずっと頑張ってるヨ」
「うん」
「メイも、頑張ってるネ。」
「え?」
思わずシトロン君の顔を見ると、稽古を見るように促される。
「イタルに比べてワタシと話すこと少ないから、こうして話せて嬉しいヨ、」
「そう?かな…」
「ワタシ、もっとメイともナカヨクなりたいネ。マスミも言ってた、稽古、カントクだけじゃなくてメイにも見てほしいヨ」
優しい声で諭すように言う。
「…」
「メイは、ワタシたちの稽古見てる時キラキラしてるネ、
わきわき、どくどく伝わって来るネ。」
「ワクワクドキドキかな?」
「オー、ニホンゴ難しいネ。」
私が昨日稽古に行かなかったから…かな?
こんなふうに戯けたり、諭してくれるのは。
「ふふ」
「メイが笑うと花が咲くみたいで、ほっこりするヨ。」
「?!」
また、ばっと振り向くとにっこりと微笑まれた。
シトロン君はさすが異国の情緒溢れると言うか…
なんと言うか、…
「真澄君が咲也君に教えてるの?!芽李ちゃんまでいる?!」
いつの間にか来ていたいづみちゃんの声に驚きながらも、席を譲ろうとすればシトロン君が立ち上がっていづみちゃんに席を譲った。
「マスミがデレたよ!今日は赤飯ネ。」
「別にそんなんじゃない」
少しむすっとして可愛い。
「はよー。」
「みんな、早いね。」
続々と残りのメンバーも来て2人の殺陣を見ている。
「二人とも、いい感じじゃん」
「昨日特殊イベントでもあったの。フラグたったとか?」
「ワタシ、隠し選択肢発見したネ。」
「マジか。キタコレ。攻略wikiに書いといて」
すぐにゲームに持っていく至さんに綴君がつっこんでる。
そんなやりとりに耳を傾けつつもだんだんとやる度に息があっていく二人に目を向けていると、
「…これなら、公演まで間に合うかもしれないね」
と言ういづみちゃん。
「本当ですか!?」
「本当に?!」
咲と被った声に思わず顔を見合わせる。