第1章 寒桜
「逃げ、た?」
「ご両親と暮らした家に居たいというから援助したんじゃないか」
…ちがう、
「…っ、」
…違う!
「そんなに文句があるなら、そもそも弟も連れて一緒に住めばよかっただろう?」
違う、違う、違う!!
「あぁ、大家さんに良くしてもらっていたみたいだしなぁ」
…なんて、汚いんだろうと思った。
「…っ、それ、は、それは!!」
それでも、返せる言葉なんてとても見つからなくて。
「大家さんは、身内じゃなくて…わたしも、未成年で、だから、」
それほどの武器を、まだ持ち合わせてなくて。
「育てられないって?
わたしたちと何が違うんだ?」
走馬灯のように、今までのことが巡ってきて。
「君も邪魔だったんだろ、お、」
"弟が"
その瞬間プツンと何かが切れて、
迎えに来てくれた大家さんが私を止めるまで暴れ続けた。
初めて、あんなに悔しかった。
こんな人たちに、頼らずに生きていけたら…
どれだけよかった?
ーーーーーー
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夢の淵で、幼い私が止める。
これ以上は夢を見てはいけないと…