第5章 *LIB ナイトメア・ビフォア・クリスマス*
『っ、いたっ!!や、やめて..』
ロック『なんだこの髪、真っ黒なのに先っぽは白くなってる!おまけになんかフワフワして柔らかいな!』
『ねぇ..やめて..っ、痛い..』
グイグイと引っ張られ鈍い痛みが襲う。必死に髪を押さえるが、子供の遠慮のない馬鹿力に負けそうになる
ロック『マフラーにしたらあったかそうだぜ!なあ、こんなに長いんだから少しくれよ』
そう言うと、ロックは手元から光る刃物を取り出すと、躊躇なしにその刃先をの髪へと伸ばした
『ぇ......』
シャキン
スカリー『危ない危ない。間一髪でございましたね』
『ぇ..ぁ..カボチャ、さん?』
突然のことに動けず固まっていたは、いつの間にか視界が真っ暗になっていることに気づく
体を抱きとめる力強い腕に、耳に心地よく響く声、そして上げた顔の前で揺れる銀髪にハッとして横を向くと、スカリーが自身を抱きかかえながら、ロックの持っていたハサミを取り上げていた
髪を切られそうになる寸前、飛び込むようにの身を抱き寄せ、もう片方の手でハサミを掬い上げたのだ
『あの、えと..』
スカリー『ロック様、でしたね?』
ロック『な、なんだよお前!いいところだったn』
スカリー『彼女に、何をやろうとした?』
ロック『ぅっ..!』
今まで聞いたこともないほどの、怒りを含む這いずるようなスカリーの低音がビリっと空気を震わす
サングラス越しの視線だけで人を殺せそうな瞳を向けられ、さすがのロックも言葉をつまらせて後ずさる
スカリー『...ロック様。貴方はとても見る目がありますねえ』
ロック『え?』
スカリー『たしかにこの素敵なお方の髪は美しい。艶があり柔らかく、とても手入れが行き届いている。己の物にしたくなる気持ちはよく分かります。
ですが、他者の..それも女性の髪を無理矢理切り落とす行為は決して許されるものではありません』
分かっていただけますね?と言葉に圧を含ませロックを見下ろすと、さすがに分が悪いと感じたのか、取り上げられたハサミをそのままに別の人間の元へと走り去っていった