第4章 *グロリアスマスカレード*
マレウス『見つけたぞ』
『ツノ太郎。いっぱい色んな人に囲まれてたけど、ここに来て大丈夫なの?』
マレウス『ああ。他の者との交流も勿論大事だが、僕が今求めているのはたった一人だけだからな。だがお前は先程から、僕以外の者と随分楽しそうに踊っていたな。
..まさか、ユウたちと踊って僕とは踊れない、などと言わないな?』
『そんなわけないでしょ。みんなとは踊ったから、ずっとツノ太郎のこと待ってたの』
マレウス『そうか..しかし順番が最後に回されるとは思わなかったな』
『..怒ってる?』
マレウス『まさか。僕がそんなことで怒るような小さい器だと思っているのか?』
『思ってないけど、目が怒ってる』
恐る恐る見上げると、黄緑の燐光は弓なりに妖しい弧を描いて細まる
マレウス『ふっ、流石は人の感情に敏感なやつだ。だが安心しろ。お前が僕の誘いを断らなければ全てが丸く収まるぞ』
『私がツノ太郎のお誘いを断ると思う?』
マレウス『..ないな』
『んふふ』
マレウス『無邪気なやつだ。さて..
、僕と一曲踊ってくれないか』
その瞬間二人の周りがざわついた。あのマレウス・ドラコニアが床に片膝をついて、あの目に焼き付くような赤を纏った美しい一人の女性に手を差し出して、ダンスを共にして欲しいと願いを請うているからだ
『王子様みたいだね』
マレウス『近い立場ではあるからな。それより、返事を聞かせてもらおう』
『..喜んで』
自分より遥かに小さな手が乗せられ、マレウスは優しく包み込むと嬉しそうに顔をほころばせながら立ち上がる
周りで惚けるように見てくる他の生徒たちを横目に、そっとステップを踏み始めた
マレウス『では始めよう。お前の美しく踊る姿を他の者たちに見せるのは惜しいが、今日は気分が良い。お前と踊れるこの上ない名誉を味わえない連中に、存分に羨ましがらせてやる』
『んふふ、悪い顔してる』
赤と深緑がユラユラと舞い踊る。仮面をつけていても嫌でも伝わる二人の美しさ、畏れにも似た威圧、立ち振る舞いに周りは口を閉ざして見つめることしかできなくなっていた