第4章 *グロリアスマスカレード*
ロロ『や、やめろ!その手を離..う、動かな、むぐっ!』
胸倉を掴む手を退けようとするが、何故か体が言うことを聞かず全身が硬直したように動かず。それだけでなく勝手に両手が口を押さえ始め、くぐもった声しか出せなくなった
そんなロロの目の前に同じポーズを取るラギーが、目元だけを弓なりにしてニィッと笑っていた
ラギー『...♪』
ユウ『ありがとうございます先輩』
ロロ『ん"ー!!ん"ー!!』
ユウ『流石に蹴りは自信ないんで拳でいきます。ああ、大丈夫ですよ。いれるのはお腹なんで服の上からじゃ見えません。あの子の受けた痛みを思い知ってください』
ロロ『ん"!?』
イデア『あ、経験者から言わせてもらうと、ユウ氏のパンチってマジで半端ないから覚悟しといたほうがいいでござるよ』
通りすがりのイデアがご愁傷さまと口だけの哀れみの言葉を残していく。ついでに聞こえてきた"ざまあw"という呟きに反論しようとするも、塞いだ口ではモゴモゴとした声が出るだけだった
そうしている間にもユウは反対の手で拳を作り、ロロの腹を狙って殴る動作を見せる
ユウ『じゃあいきますよ。しっかり味わって下さいね』
ロロ『ん"ーーっ!!』
キイ..と開かれた扉は決して会場に響くような音ではなかった。しかし、その者が中へと一歩踏み入れた瞬間、その場の時間が停止したように静まり返る
誰もがその人物に目を奪われ、会話や食事の音は途絶える。歩を進めると全員がそれを追うように顔を動かし、歩く先にいる者たちは自然と道を開けていく
赤
鮮烈な赤だった
歩くたびにフワリと揺れる裾は風に揺れる可憐な花のよう。しかし腰に巻かれ後ろで大きく結ばれたリボンや裾に散りばめられた装飾、僅かに覗く下地、白く細い首を守るように留められたふんわりとしたチョーカー
眩しい赤を引き締めるような挿し色の"黒"が、どことなく危うい雰囲気を醸し出す。彼女に近づけば、その色に取り込まれてしまうのではないかという小さな恐れを抱かせる
長い睫毛の上に塗られた淡いピンクのアイシャドウが可憐さを出し、ぷるんとした小さな唇を彩る濃い目の赤がどこか挑発的に周りの目を引いていく
その姿はまるで、昨晩人々を混乱に陥れた紅蓮の花のようだった