第4章 *グロリアスマスカレード*
輝石の国・ノーブルベルカレッジ
『着れた..可愛い』
真新しい服に小さく笑みを浮かべながら、姿見でもう一度身なりを確認すると、仕上げにふんわりとしたボリュームのベレー帽を深く被った
『耳、ゴソゴソするけど我慢。尻尾も..大丈夫』
周りに黒兎だと気づかれないようにするために耳は勿論、今回は尻尾も服の下に隠していた。さすがのクロウリーもが黒兎だという情報は伝えなかったのか、帽子にも服にも獣人用の通し穴はなかった
『みんなもう行っちゃったかな?早く行こ..』
?『着替えは済んだようだね』
『!!!わわっ..!!』
ガチャと開いた更衣室の扉の先にまさか人が立っているとは思わず、驚きのあまり後ずさりすると足がもつれバランスを崩した
?『っと..大丈夫かね?』
『ぁ..ご、ごめ..』
後ろへ倒れそうになった体を伸びてきた腕が抱きとめる。夜の冬の街のような灰がかった黒の瞳が冷静に見下ろす
躓いたことと目の前の人物、この学校の生徒会長であり今回の交流会を企画した張本人、ロロ・フランムに助けられたことに内心パニックになっていた
『あの..す、すぐ離れるから..』
ロロ『待ちたまえ』
『ぇ..わっ..』
突然支えるために置かれていた手にグッと引き寄せられ、の体はロロの腕に包まれる。いきなりのことに動けずにいると、ロロは目の前の艶めく黒髪に鼻先を近づける
その瞬間、わずかに香ってきた花と甘い匂いが鼻孔をくすぐり、胸の奥底で火種がついたような熱い感情が灯り始めた
ロロ『(なんだこの匂いは?胸の奥が..)』
『えと..あの..はな、して』
信用していない相手に抱きしめられていることに恐怖と焦りが募り、体が震えだす。弱い力でロロの体を押し返すと、怪訝そうな表情で腕が解放された
ロロ『失礼。震えるほど怖がらせてしまうとは、申し訳ない』
『..平気。早く行こ』
ロロ『ああ。みなはもう学園の外に出て君を待っている』
怯えた体を縮こませながら歩きだした背中の後に続きながら、ロロは眉間に皺を寄せて小さく呟いた
ロロ『忌々しい魔法士が..』