第2章 第一章君が好き
【万理side】
次の日、奏音さんは出勤していなかった。
もしかして俺の所為かと思ったけど、単に公休日だった事を後から思い出した。
「よぉ万理君、顔色悪いな」
「律さん」
朝から事務所に籠って事務作業をしていたけど、そんなに顔色が悪いのかな?
対する律さんは今日も綺麗だった。
カッコいけど綺麗でハリウッドスター顔負けだった。
やっぱりカリスマ美容師はアイドル並みにオーラがあってお洒落なんだろうな。
「あれ?その服」
「解るか?少し新調したんだ」
新しいスーツだった。
凄くかっこ良くて、律さんにすごく似合っている。
「りーちゃん!新しいスーツかっけー!」
「こら環君!失礼だよ」
仕事を終えて一足先に返って来た環君と壮五君の後ろには熱そうにしている響也さんがいた。
「あれ?響也さんも新しいスーツですか?」
「ああ、新調したんだ」
よく見ると二人のスーツは色違いだけどデザインが似ている。
「キョンキョンから聞いたぞ。そのスーツカナちゃんに作ってもらったんだろ!何時もマコちゃんも着ているし!」
「え?そうだったんですか?」
「ああ、アイツの新作だ…と言っても試作品だがな」
とても試作品には見えない。
「まぁ、俺達の専属仕立て屋だからな」
「俺達にとっても衣装は鎧のようなものだ、戦装束というべきか」
「仕事でも服装には気を使わないとだめだが…ある程度以上のファッションセンスはアイツ以上の逸材はないからな」
芸能界でも二分する程のカリスマ美容師とカリスマメイクアップアーチストにここまで言わせるなんて凄いな。
「じゃあマコちゃんは?」
「真琴だけじゃない。うちのタレントのスタリストは全部アイツがしてるんだから当然だろ」
「えっ…そうだったんですか!」
確かにMezzoの衣裳担当は奏音さんがしていたけど、タレント全員をしていたなんて知らなかった。
「ズルいぞ!」
「そうは言うが俺達は宣伝もしているし、今さらだからな」
「そうだな?昔からだったし」
三人は幼馴染だって言っていたな。
「バンちゃんだってずっこいと思うよな?」
「え?」
「バンちゃん思うよな!」
「万理さんがそんなことを思うわけないだろ」
ズルいか…
俺は一瞬だけ何を思ったんだ。