第2章 第一章君が好き
その夜車の中でこってり絞られた。
「聞いているの!もう一人であんな危ないところに行ったらダメ!」
「もう成人した大人なんですけど」
「見てくれは童顔だからダメ」
さりげなく貶しているのか。
万理さんがここまで怒るのは珍しいな。
「万理さんの方が危ないと思います」
「なんで?」
「だって歌舞伎町の近くはおカマバーもあるし」
「えっ…」
「万理さん前科持ちだし」
別に犯罪を犯したわけじゃないけど、イケメン好きな肉食系のホステス(中身は男)に言い寄られ迫られそうになった事がある。
まぁ偶然居合わせた響が助けたけど。
「万理さん可憐だから」
「俺、そんな風に見えるの」
「少なくともカマっ娘の皆さんにしたら最高級の肉です」
「肉…」
言い方を変えれば狼の群れの中に一匹の山羊を放り込むようなものだし。
「君の方が危ないんじゃ」
「少なくとも貞操の危機はありません。万理さんみたいな男性は餌食にされますが…もしかしてそういう性癖が」
「ないからね!」
「なら余計に危ないです」
私の場合は一人で乗り込むような真似はしないわ。
響と律が一緒だからある程度の安全は保障されているし風俗系の店に入る事はしないようにしている。
だからある意味万理さんの方が危険だ。
「私はこう言った店は慣れてます常連ですから」
「常連…」
「だから…あれ?どうしたんですか万理さん?」
ふと見ると真っ青な表情をしている万理さん。
幸いにも信号が赤だから問題ないけど、本当に具合が割るんじゃないだろうか?
「大丈夫ですか?」
「無理…」
よっぽど体調が悪いみたいだ。
この後私は運転を代わり万理さんのアパートまで送り届けることにした。
勿論自宅にはタクシーを捕まえてそのまま帰ったけど。
明日は休んだ方がいいけど休まないだろうな。
仕事人間だから。
その予測通り万理さんは出社したようだ。
ちなみにその日は私は休みだったので出社はしてないけど、アイナナ寮に呼ばれたので鉢合わせとなるのだが、何故か紡ちゃんと真琴につい詰められてしまった。
本当に万理さんは愛されているわね。