第1章 プロローグ
見てくれは良いのに本当にもったない。
世の女性は何をしているのか。
「もしやゲイ」
「違うから」
「でも、時々社長を熱いまなざしで…」
「憧れと尊敬だけだから!」
向きになるのがますます怪しい。
私の周りにはそういう傾向の人が多いから別に偏見はない。
「万理さん、大丈夫ですよ」
「何が?」
「恋愛は自由だし、何かあったら話は聞きます。だから…」
「大いなる誤解だよ」
五年前は絶望した表情をしていた。
表向きは作り笑いをしていたけど、今はそんな風には思えない。
「万理さんは幸せにならないとダメなんですよ…その資格を持っているから」
「#NMAE1#…?」
この人に悲しい顔も不幸も一番似合わない。
だからこそ幸せになって欲しい。
「そうやって女の子を口説いているの?」
「本心ですけど」
「やっぱり立悪い!そういう顔で女の子に触れたらセクハラになるからね!」
何故に?
私はセクハラと訴えられるような事はしていない。
「別にスキンシップとおもうんですが」
「度を超しているよ!紡さんにも抱き着いていたでしょ?」
「紡産の要望ですけど。先絞めて欲しいと言われたし」
「言われたらするの?なんて質の悪い…」
何でダメなのよ。
紡ちゃんは妹のようなものだし。
「先日は真琴君にまで…」
「ああキスして事?」
「いくら君がオープンでもあれは…」
挨拶代わりのキスなんて今さらなんだけど。
「別にあんなの挨拶代わりだし、幼馴染を可愛がっているだけなんですけど。真琴も怒ってないし」
「怒ってなくても問題だからダメ…社長もどうして頼めないんだ。俺なんて距離が近いだけで怒るのに」
「安全圏だからでしょう」
いくら信頼できても異性じゃ変わって来る。
けど、事情を知らない人からすれば色々と思う所はあるかな。
なんせ私は万理さんを含め、タレント達からは男と思われているから。
真琴にキスするのも問題視されるのは解っている。
でも私がここで働く条件として私の保護者が条件を付きつけたのは男装する事だった。
だから万理さんにも男と通している。
バレそうになることは多々あるけど、真琴や社長に、他のスタッフがフォローをしてくれたのだから。
五年間隠し通せていた。