第1章 プロローグ
大きすぎるわけでもなく、かといって小さすぎるわけでもない事務所に手私は事務作業をしていた。
訳あってここ、小鳥遊芸能事務所にで働いていた。
芸能事務所と言っても、大手ではないので人では社長と事務員二人という余りにも人材不足だった為多忙を極めている。
社長の方針曰く、タレントが訳ありばかりで事情も複雑故に社員は厳選したいとの事。
そして私、遠野奏音はこの事務所に勤めて五年になるのだが、そろそろ契約が切れる時期だった。
元より、私は正規で働いているのではなくアルバイトとして働いている。
契約期間は五年の約束だったのだ。
「もう五年か…」
少し休憩を挟みながら休憩をするとデスクに置かれたのはコーヒーだった。
「何が五年なの?」
「万理さん?」
小鳥遊芸能事務所のかなめである事務員こと大神万理さんが今日も爽やかな笑顔でコーヒを淹れてくれた。
「いえ、もう五年になったのだと思いまして」
「そっか。そうだね…俺がここにお世話になってそんなになるね」
彼がここに働くことになるきっかけも突拍子もない出来事だったけど、私がここでお手伝いをするようになったのも色々訳ありだった。
拾い癖があると色々不自由をする。
私の幼馴染も色々気苦労が絶えないようだけど。
「謙遜は必要ないですよ。貴方はここのスーパー事務員なんだから」
「じゃあ奏音さんはスーパープロデューサーだね」
「私の場合は別ですが」
何?スーパープロデューサーって。
万理さんは身内の贔屓目なしに色々ハイスペックである。
まぁ、時々抜けている部分は否めないけど。
「もしかしてあれ?入社当初事務所に女の子が突撃した事?それとも修羅場になった事?」
「えっ…いや…」
「モテ過ぎるのも苦労しますね」
あの時は大変だった。
外見がアイドル以上に良いから町で逆ナンされるのは日常茶飯事で、営業に向かえばお得意さんに迫られる。
恐ろしい事に同姓にも迫られることがあるんだから。
「その言葉そっくりそのまま返していい?昨日も所属タレントに抱き着かれていたのは誰?」
「スキンシップです。あの程度普通です」
「普通なわけないだろ…頼むからスキャンダルだけはやめてね」
最近小言が多くなって来た気がするな。