第2章 第一章君が好き
IDOLISH7とMezzoの新しい衣装のデザインを考えながら頭を悩ませる。
「やっぱりこれとかれかな…」
二つのユニットのカラーをきっちり変えながらも衣装が淡白にならないようにしたい。
律が考えてくれた振り付けは動きが激しいから、できるだけ重くならないように軽量化を図りたい。
「奏音さん?」
「え?」
「うわっ…すごいデザイン画の山!」
背後から声を掛けられ驚いた私はデザイン画を散らしてしまった。
「すいません!」
「俺の方こそ」
床に散らばるデザイン画をかき集めるのを手伝ってもらう。
「あれ?でも夏の衣裳に冬のまで…多すぎない?」
「来年の春の分まで作っておかないと…発注も間に合いませんし」
「え?そうなの?」
これまでは私がデザインから制作まで携わっていたけど、本格的にデビューとなった時の為に先送り、先送りで作っておく方が良い。
「あれ?新しいユニット?」
「ああ、これは」
企画書を机に置きっぱなしにしていたのを忘れていた。
「TRINITY」
「新しいユニットです」
「これって…まさか!」
随分前から企画書を出していて、ようやく通った物だ。
「彼等のデビューが決まりそうなんです」
「そっか…彼が」
現在アイドル候補生はIDOLISH7だけじゃない。
彼等が活発に活動しているけど、他のタレントだって地道な活動をしていた。
「随分待たせてしまいましたが、ようやく真琴もデビューです」
スカウトから数日でチャンスをモノした彼等を見ていた真琴は辛い思いをしただろう。
けれど、ちゃんと機会を伺っていた。
デビューする前に下準備を整えるべくこの機会を狙っていた。
「来週、ダンスフェスティバルが開催されます。そこで彼等をお披露目する手はずです」
「ダンスフェスって…テレビでも有名な音楽番組じゃない!」
「その主催者がクラブの経営者なんです」
「もしかして歌舞伎町の?」
「はい」
あの日も、ダンスフェスの事で話をしに行ってきた。
新人の枠が開いているなら彼等のお披露目にできないかと考えていたのだ。
喜ばしい事に枠が一つだけある。
「チャンスはどんなところに転がっているか解りませんから」
「奏音君…」
これでようやくデビューさせてあげられる。