第2章 第一章君が好き
【万理side】
真琴君はアイドル候補生としてレッスンをしながらもデビューの機会に恵まれなかった。
真琴君だけじゃない。
数年間候補生のままだったりコーラスやバックダンサーのタレントは多くいる。
なのに後からスカウトされた彼等が先にデビューの話を来た時、彼はどう思っただろう。
真琴君は何も言わなかったけど、他の子達は不満だったはずだ。
言葉にこそ出さないが…。
「三年間、あの子達は耐えました。ようやくデビューさせてあげられます」
「そっか…良かった」
きっとモチベーションを保つために奏音君はずっと励まし続け、活動の場を探すべく走り回っていたんだろうな。
「ユニットは三人編成で行い真琴に後二人は…」
「真琴君にあとの二人は拓斗君と湊君?」
「この三人で行きます。センターは湊です」
古株のメンバーの三人だった
この二人も才能があるけど少しムラがある。
でも、それが狙いなのかもしれない。
「彼がデビューすれば他の子達のモチベーションにもつながるはずです」
やっぱり敵わないな。
IDOLISH7だけでなく事務所に所属するすべてのタレントの事を考えて愛情を持って接する奏音はすごいと思う。
そして彼等の元に向かいデビューの話をすると。
「え?デビュー?」
「本当ですか!僕達もデビューできるんですか」
「本当に?」
やっぱり驚いているな。
ずっと小さな仕事ばかりだったしデビューに繋がらないと思われていたからな。
「今度のダンスフェスでダンスを踊って貰います。そこでお披露目です。そこで社長に見せつけてください」
「やっと…やっとか!」
「ようやく俺達もデビューか…長かったな」
「ああ。このまま朽ちて行くと思ったぞ」
二人はともかく拓斗君の発言は聞かなかったことにしよう。
それだけ思い詰めていたのは解るけど、まだ若いのにその発言はどうなんだろう。
「今から打ち合わせをします」
「「「はい!」」
本当に良かった。
IDOLISH7の正式なデビューはまだだったけど。
彼等が日の当たる場所にようやく出ることができて良かったと思った。
けれど俺は知らなかった。
奏音と君と一緒に入れる時間には限りがあった事。
そして彼がバイトである事を忘れていたんだ。