第2章 第一章君が好き
【万理side】
外回りから帰って来ると何故か皆が縁になって険しい表情をしていた。
「まったく奏音さんも律さんも環に甘すぎるだろ!」
「今回ばかりはな…」
「四葉さんを甘やかしてばかりだから調子に乗るんです!」
また何かトラブルがあったのかな?
「どうしたの?」
「万理さん、それが…」
「またタマがやらかして…それで奏音さんと律さんが環を連れてアイナナ寮に行ってしまったんです」
大和君から大まかな事情は聞かされるも、律さんが一緒だってことは…。
「環君は理由なく我儘を言わないんじゃないかな?律さんを呼んだっのは間違いないと思うな」
「なんでですか?」
「だって彼は振付師でもあるし…環君も律さんの事なら素直に聞くでしょ?」
グループ活動をする上で色々トラブルはあるだろうし。
特に環君は繊細だから色々衝突してしまう。
言葉が足りない所為で誤解されるし。
「じゃあ、奏音さんは解ってて…」
「多分そうだと思いますよ紡さん」
環君にもちゃんとした言い分があると思ったから律さんを呼んだんだと思う。
「ですが…」
「奏音さんは甘やかすだけの人じゃないよ。相手を自分の型に嵌めようとせずその人の気持ちを理解しようとする人だよ」
相手の声に耳を傾け、あくまで強制的に言う事を聞かせたりしない。
だからこそ他のタレントも彼を慕うのかもしれない。
「三月君たちの気持ちも解るけど…環君は良い子でしょ?」
「それは…まぁ」
デビューができなくなったからイラついているのは解るしね。
環君と壮五君に過度な期待をしている部分もあると思う。
「すぐ帰って来るよ…あ、帰って来たね」
「皆…ごめん」
「「「え!」」」
帰って来て即謝る環君に誰もが驚くけど。
後から事務所に入って来た二人が不敵に笑っていたのを見て流石だと思った。
本当に敵わないな。