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『IDOLISH7』世界で一番好きな人

第2章 第一章君が好き





夜に時折思い出すんだ。
千が俺に向かって叫んでいた悲鳴が。

そして別れを余儀なくされたあの日。
胸を抉られるような別れに苦しんだ俺は夜に魘され、一人で苦しみ続けた。


そんな時に言ってくれた。

「貴方に不幸は似合いません。そんな顔をしていたら幸せになれませんよ」

俺が精神的に参っている時に言われた。
悲しい感情を前に出したつもりはないけど無理をして体調管理を怠ってしまった。

「ちゃんと目を開けて空を見て、貴方は間違った事をしていないなら誇るべきです。貴方は誰よりも素敵です」

言葉だけの慰めだったなら俺の心に響かなかったけど、言葉だけじゃない。


彼はきっと捨てて来た何かがあったんだと解った。
笑っているのに笑顔が悲しくて彼が時折奏でる旋律がもっと悲しくも世界を美しく感じさせる。


そっか…。

俺はあの時から君が好きだったんだ。


何時も俺が助けて欲しいとサインを送った時、助けてくれる。


君は天然で、俺を振り回すのに。

なのに何処か距離を保とうとしている。


ズルいよ。
俺が近づけば距離を持つのに、俺が弱った時は近づいてくるなんて酷すぎる。


なのに俺は…


少しずつ。


君を好きになってしまっていた。


君に過保護になるのは心配だから。
危ない事をして欲しくなくて。

「万理さん?」

「奏音君…」


抱きしめたくなってしまう。

こんな優しい旋律を聞かされたら俺が勘違いしちゃうよ。

「ごめん、少しだけこのままでもいい?まだ怖い」

「いいですよ」

我ながら卑怯な言い方だと思うけど、この温もりを手放したくない。


だからあと少しだけ。



俺が奏音君の肩に頭を預けると嫌がることなく頭を撫でてくれた。


「もう一度聞きたい。君のピアノ」

「皆には内緒ですよ。特にアイナナにはね?」

「うん…」

何でだろう。
その仕草一つ、一つが何で可愛いんだろう。


相手は男なのに。

女性アイドルや女優よりもずっと綺麗で可愛く見えてときめいてしまう。


いや相手は男。

男だけど。

「可愛い…」

元から中性的な顔立ちをしている奏音君は可愛かった。

時折男であることを忘れるし、なんかいい香りがするし。


俺、カミングアウトしちゃったのかな。

俺の悩みは更に悪化することになるのだった。
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