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『IDOLISH7』世界で一番好きな人

第2章 第一章君が好き






無理矢理自分を納得させようとするも。


俺は男が好きだと思った事はない。
千と組んでいた時に有らぬ疑いをかけられたことはあったけど。

「ないな…へ?」

上を見ると何かが頭に落ちて来た。


「わぁぁぁぁ!」

「万理さん!」

「出たぁぁぁぁ!」


カサカサ動く奴が俺の頭に!

「わわっ…アイツが来た!」

「ちょっ…落ち着いて!」

「無理無理!ひぃぃ!」


何で夏にあんな大きな蜘蛛が!
ちゃんと念入りに掃除しているのにどうして!

「万理さん蜘蛛は外に出したから大丈夫ですよ」

「でも…また出たら。怖い怖い!」

まだあの気持ち悪い感触が残ってる!

無理無理!!

怯える俺に優しい手が触れた。

「よしよし、大丈夫ですよ」

ぎゅっと抱きしめられ、心臓の音が心地よく感じる。


心地よいはずなのに苦しい。

何でだろう。


ドクン…ドクン。


「目を開けるのご怖いなら落ち着いてからでいいですよ」

「うん…」


そういえば俺が落ち込んだ時は抱きしめて貰ったんだ。


ポーン!

ピアノの音だ。

優しい音色で聞こえる旋律にゆっくりを目を開けると、何時の間か事務所内にある一室にいることに気づいた。


グランドピアノが置かれている部屋で開かずの間と言われていたから俺も入った事はない。


「落ち着きましたか」

「はい…この部屋」

「ここはアイドルの子達には秘密。真琴や紡ちゃんが小さい頃遊び場にしていた場所でもあります」


じゃあこの部屋は特別な部屋なのかな。

「律と響はここでイメージをする為にも使っているんです。魔法をかけるために」

「魔法?」

「そうでしょ?メイクも音楽も魔法ですから」

そうかもしれない。
一時だけ魅せる魔法だろうな。

「私達の仕事は魔法をかける事、夢に破れたり、理不尽な現実で傷ついている人の背を押したり、心を癒す尊い仕事です」


ああそうか。
奏音さんは人を尊敬し愛している人だった。

人を喜ばせることを何よりの喜びとして他人をを幸せを願える人だった。

だから俺はあの日救われたんだ。


間違ってないと思って千の傍を去ってしばらくしても、傷は癒えず夜は魘されていた。

そんな俺に優しく手を差し伸べ、慰めてくれた。


今日のようにピアノを弾いてくれて。

俺はその日から悪夢を見なくなった。
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