第8章 Joint work

雨が降っている。
もう1週間、しとしとと雨は降り続いていた。例年より早い梅雨入り、と天気予報のお姉さんが言っていたのできっとそうなのだろう。
傘は嵩張るし、電車は混むし、髪の毛はまとまらないし、洗濯物は乾かないしまるでいい事無しだ。

ここ最近の唯一いい事といえば、コンペへ向けて着実に準備が進んでいることくらいだ。
担当の先生にも相当いいペースだと言わしめた。
今は仮組みが終わって本番用の生地に手をつけたところ。つまり、ここからは主に私の担当分野だ。




今日は生地に刺繍を入れるつもりで、学校の刺繍機を予約してある。
手刺繍では範囲が広すぎるため今回は刺繍ミシンを使うと三ツ谷くんとも打ち合わせ済みだ。


なんでもそつなくこなしそうに見える三ツ谷くんだが、意外にも機械系が苦手らしい。
パターン用CADや刺繍のデザインソフトは基本操作も怪しいのだと言っていた。
そういえば提出するレポートなんかも全部手書きだ。


だから三ツ谷くんの手書きのイラストを元にデータを作るのは私。やっと三ツ谷くんの役に立てているようで、パソコンに向かいながら顔が緩みっぱなしだ。