第1章 Prologue
「服飾系目指してんの?」
「はい、舞台衣装とか作りたくて。」
「すげえね!オレはさ、デザイナーになりたいんだけど方向性とか全然決まってなくて。」
「私だって、宝塚に憧れただけですよ。」
私達が今日初めて会ったと言って信じる人がいるだろうか。そのくらい私と彼の会話は途切れることがなく、まるで何年も前からの友人のようだった。
私は特急、彼は在来線。
名残惜しいがここでお別れだ。
「また入学式で会えるといいな。」
「ですね!」
電車のドアが閉まる。私のホームまで見送りに来てくれた彼に手を振ってチケットに印字された座席に座る。
ガクンと車体が揺れて電車はゆっくりと動き出した。
母に『電車に乗ったよ』とメールを送ってハッとする。彼の名前も連絡先も聞かなかったことに今更気づいてしまった。
一瞬の後悔、しかしそこまで落ち込んでいない自分がいた。
彼にはまた会える気がしたのだ。
桜の季節に、あの場所で。
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Prologue/序章