第6章 Slowly but surely
「三ツ谷くん、お料理も出来そうよね。」
「まあ…オフクロいない時は妹たちのメシ作ってるしな。ひと通りは出来るぜ。」
「高校も自分で作った弁当持ってきてたもんな。」
「えー偉い!もうお母さんって呼んでいい?」
「それはやめろ。」
「ハハ、ちゃん結構酔ってんな?」
「酔ってないよお!私強い方だもん!」
強い方、だと思っていたのだが。2人のペースに合わせてグラスを空けているとだんだん楽しくなってくる。これが『酔う』ってことなんだろうか。
こんな楽しい気分になれるのなら社会人がしょっちゅう飲み会をやりたがるのも頷ける。
「さん、そろそろやめといた方がいいと思うぜ。」
「えーなんで?まだ大丈夫だけど!」
「ちゃん飲み慣れてないだろ、明日後悔するからその辺にしとけ。」
大丈夫なのに!とたまたま通り掛かったぺーやんくんに泣きついてみたのだが、オレももうやめといた方がいいと思う、というなんとも素っ気ないお返事とともにジョッキに入った水を頂いた。
「ほら、とりあえず水飲め、な?」
「水飲んだら帰るぞ。」
「えええーーー」
「もう結構いい時間だから。」
ほら、と時計を見せられる。もうじき日付が変わるところだ。明日も一限目から座学だ。もう寝る予感しかしない。