第6章 Slowly but surely
家まで送る、という2人の言葉に甘えて3人並んで夜道を歩く。
暖かくなってきたとはいえ深夜ともなればさすがに冷える。少し強めに吹いた風に、思わず身震いをした。
「ほら。」
差し出されたのは薄手のカーディガン。記憶違いでなければ三ツ谷くんが着ていたもの。
ほんのりと温もりが残るそれを慌てて突き返す。
「そんな追い剥ぎみたいなことできませんて!三ツ谷くんが寒くなるじゃん!」
「ハハ、追い剥ぎて。」
「風邪ひかれたら困るから着とけ。」
「…ありがとう、ございます。」
これ以上固辞するのは失礼だろう。
ありがたく袖を通すと自分のものとは違う香りがふわりと鼻をくすぐった。柔軟剤か、香水か。
本日二度目の赤面を隠すように満月が浮かぶ空を見上げた。
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Slowly but surely/少しづつ、確実に