第6章 Slowly but surely
「じゃあ私先に帰るね。」
「ん?なんで?」
「一緒にメシ食いに行かねーの?もしかしてこの後予定あった?」
また明日、と言いかけた私にかけられたのは予想外の言葉。
「え?私も行っていいの?お邪魔じゃない?」
「そのつもりだったんだけど。」
「あ、初対面の男とメシ行くのさすがに嫌か?」
ドラケンいかついからなー、オマエも似たようなもんだろ、とどつき合いが始まりそうだったので慌てて止めに入る。
「どうせ家帰っても一人だし。一緒に行ってもいい?」
「おう」
「何食いたい?」
「えーどうしようかな、2人のおすすめは?」
「おすすめっつってもいつも結局居酒屋しか行かねえしなあ。」
「ああ、ぺーやんがバイトしてっとこ?」
「海鮮が美味いよな。」
「じゃあその『いつもの居酒屋』にしよ!こっちのお店全然分からないから楽しみ!」
□
そのお店は繁華街から少し離れた所にあった。なかなか繁盛しているお店らしい、店内の賑わいが外まで聞こえてくる。
「ぺーやん、席空いてる?」
慣れた様子でドラケンくんが暖簾をくぐる。すると1人の店員が駆け寄ってきた。
「ドラケン!お、三ツ谷も一緒なの珍しいな。…っと、そっちの子はお前らどっちかのコレ?」
さっきのドラケンくんと全く同じ事をしていて思わず吹き出してしまった。