第6章 Slowly but surely
「あれ、三ツ谷?」
男性の声に三ツ谷くんが振り返る。雑踏の中でもよく通る声だった。
「ドラケン!久しぶりだな、仕事帰りか?」
「おう、やっぱ下っ端はつれーワ」
黒髪を高い位置でまとめて、剃りあげている左のこめかみに龍のようなタトゥー。
三ツ谷くんの知り合いのようだけど正直見た目が怖い。背も高いし体格もいい、そして落ち着いた雰囲気も相まって、黙って立っているだけでも威圧感がある。
あ、でもこの人も背高くて衣装映えしそう。体つきが綺麗だから余計な装飾のないシンプルな服がいいな。
私が余計なことを考えている間に二人の会話は進んでいく。
仕事どうよ、とか、最近アイツらと会ってる?とか。
途中で八戒という単語が聞こえてきて、八戒くんとも知り合いなんだなと考えていると、ドラケンくんとバッチリ目が合った。
「そっちの子は?コレ?」
ニヤッと笑って小指を立てたドラケンくんの頭を「違えよバカ!」と三ツ谷くんは叩いている。
いいなあ、八戒くんといい気の置けない友人が何人もいる三ツ谷くんってもしかしてすごく人望があるのかもしれない。
「学校の子だよ、生地見に行った帰り。」
「フーンまあいいや、このあと暇なら飯でも行かね?」
「いいな、どこ行く?」
どうやら2人は一緒にご飯を食べに行く算段を始めたようだった。旧知の仲のようだし私が居ない方が話に花も咲くだろう。