第3章 Partner
突然パシンと音が鳴った。
驚いて横を見ると三ツ谷くんが自分の顔を平手で叩いて立ち上がったところだった。
「あーくそ!オレかっこ悪ぃな!」
何となくつられて立ち上がってしまったが、私の頭には疑問符しか浮かばない。
そんな私をよそに三ツ谷くんは自分の鞄を開けると、1冊のノートを取り出した。
そしてそれをそのまま私に差し出す。未だ疑問符の取れない私は三ツ谷くんの勢いに押されるようにしてそのノートを受け取ってしまった。
「5人から誘われて困ってるとこ申し訳ないんだけど、オレもさんの相方に立候補していいか?」
「え?」
「今日言うつもりじゃなかったからちゃんとしたノート作ってなくてごめん。それ、普段デザインのラフ描いてるやつ。」
「…今見ても、いい?」
三ツ谷くんが頷いたのを確認してページをめくる。
待って、さっきこれがラフって言った?
確かにイラストは粗いが生地の質感や模様、織の柄まで詳細に書いてある。
あと寸法さえあればすぐにでも製作に取り掛れるレベルだ。
決して奇抜なデザインでは無いけれど、要所要所にこだわりを感じる物が多い。
他人のデザイン画を見て初めて「作ってみたい」と思った。
「あのさ、」
「ん?」
「私でいいの?」
こんな素敵なデザインならもっと技術ある人とも組めるよ、引く手数多でしょ、私にはもったいない。そういうニュアンスのことを言ったと思う。
思う、というのはその時の三ツ谷くんの顔があまりに悲しそうでそれがとても衝撃的で、他のことをよく覚えていないからだ。