第3章 Partner
渋谷駅で電車を降りて、改札まで歩いている間も三ツ谷くんはずっと考え事をしているようだった。
心ここに在らずといった様子なのによく人にぶつからないもんだなあと少しだけ感心する。
「なあ、ちょっと寄り道していかね?」
改札を出たところでいつものようにじゃあね、と言おうとした私に、三ツ谷くんはそう言った。
やっぱりまだ難しい顔をしていたけれど、その声は優しいいつもの三ツ谷くんのもので少しほっとする。
どうせ帰っても1人の家でBGMの代わりにテレビでもつけて寂しく過ごすだけ。
二つ返事でその提案を了承した。
2人で並んで土手を歩く。
少し日が傾いてきた川べりはオレンジの光を反射してきらきらと輝いている。
私たちの横を数人の小学生がじゃれ合いながら通り過ぎて行った。
「妹ちゃんのお迎えは大丈夫なの?」
「今日はオフクロが休みだから。」
沈黙に耐えきれず振った話題も撃沈。
寄り道しようと誘ったくせに、三ツ谷くんはまた黙り込んでしまった。
どうしたらいいか分からない。これまでの付き合いの中で(といってもまだ1ヶ月も経っていないのだが)こんな三ツ谷くんを見るのは初めてだ。
「下、降りようぜ。」
河川敷に降りれるようになっている階段状のところに2人で腰を下ろした。
再びしばらくの沈黙。
三ツ谷くんは口を開きかけては閉じて、閉じてはまた何か言いたげに口を開きかける。