第3章 Partner
「さんて技専だよね?」
「これよかったら見てもらえる?」
茜の一件を皮切りに、放課後までの間に私の元には5冊のノートが集まった。
家でゆっくり見せてもらうね、すぐ返事出来なくてごめん、とそれぞれに返事をして鞄にしまう。
嬉しくないはずがない。これだけの人が私の技術を買ってくれているわけだ。もうこの場で踊り出したいほど嬉しい。
ちょっと過大評価な気もするけど。
でもそれはつまり、少なくとも4人にはごめんなさいをしないといけないわけで。
困った。非常に困ったことになった。
これが所謂嬉しい悲鳴と言うやつならもうずっと引っ込んでいて欲しい。
□
「昼よりさらに元気なくなってないか?」
帰ろうぜ、と声をかけてくれた三ツ谷くんに事のあらましをかいつまんで説明する。
「断るのだって大変じゃん?デザインが良くてもあんまり仲良くない子と組むのも不安あるし、仲いい子でもデザインの方向性が合わなかったら作り続けるの苦痛になるだろうし。」
私なんかにこんなに声かけてくれる人がいると思わなかったんだよなあ、と手の中の定期を弄ぶ。
「そりゃあ嬉しいよ?嬉しいんだけどね?…ねえ三ツ谷くん、どうしよう。」
いつもならアドバイスなり、励ます言葉なりをかけてくれるはずの彼は先程から押し黙ったまま。
彼にとっては見慣れているはずの電車の窓の外の景色を難しい顔をして眺めている。
何か気に触ることを言ってしまっただろうか。5人から声をかけてもらった、なんて自慢だととられてしまっただろうか。
ぐるぐると思考がマイナスに引っ張られる。