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《ヒロアカ短編集》角砂糖にくちびる

第11章 お代は要りません《後編》◉相澤消太



「決まってるじゃないですか・・、私はイレイザーのファンなんです、貴方に誘われたら絶対に断れない、何度だって・・!」



一度こぼれ出た言葉は、堰を切ったように流れ出ていく


「そんなの良くないのに、だから思い出にしたいのに、」







また誘ってもらえるんじゃないかって期待してる自分に幻滅してるんです———









「先生にとっては合理的な関係でも・・っ」


そう言葉にした途端、ぐちゃぐちゃになった気持ちが涙と一緒にぼろぼろと溢れて
今まで彼に見せていた姿まで全部全部剥がれていくみたいで、そんな自分が情けなくて悲しくてまた涙が込み上げる





「・・言いたいことはそれだけか」


聞いたことのないほど冷たい声、電話越しでも充分伝わってくる彼の怒りに鼻の奥がつんとする

それでも私には、自ら遠ざけることを言ってしまった後悔から目を逸らして、これでよかったのだと言い聞かせるしか道はないのだ


「・・ごめんなさい」






果てしなく感じた沈黙の後、深く吐かれたのは落胆の溜息
震える唇を噛み締めながら握りしめた携帯は、耳に当たるその温度まで冷たく感じて
いっそのこと切ってくれたらいいのに、と氷のような床にしゃがみ込んだ









「・・いや、俺が悪い」

唐突に聞こえたその言葉、力なく吐かれた息が鼓膜を揺らす





「好きだから、帰したく無かった」

きちんと言葉で伝えるべきだった、項垂れるように呟かれた声の後ろに騒がしい踏切の音が聞こえる


「アンタの好意に浮かれてたんだ」

順序を無視したのは謝るよ、沈んだような低い声音に私は自分の耳を疑って
また熱を持ち始めた携帯を握りしめよろよろと立ち上がると、私は冷蔵庫に背を預けた


「え、そんな、待ってください」

「さすがの私でも、そんなの合理的虚偽だって、わかります」


そうなるよな、また深い溜息とともに聞こえた小さな声を電車の音が掻き消していく

驚きと警戒に引っ込んだ涙、こんなに現金な女だったのかと自分でも戸惑って
「好きだから」、数秒前にそう音を発した彼の声が耳に届いてからずっと、全身が沸き立つように熱くなって恨めしい
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