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《ヒロアカ短編集》角砂糖にくちびる

第11章 お代は要りません《後編》◉相澤消太



「オーーーーーイ!!Are you ok?」

「わっ、あっ、山田先生・・」

「ダイジョブ?目開けたまま失神してンのかと思ったぜェ!」


ぐるりと見回すとそこは人気のない食堂の隅、オレンジに照らされた壁の時計はすでに夕刻を指している
どうやってここに来たのかすら覚えていないけれど、きっと仕事が全く手につかず頭を冷やしに来たのだろう


授業終わりに通りかかったのか、心配そうに私を覗き込んだ山田先生は椅子を引いて目の前に腰掛けた



「めぐチャン、さてはアイツと」

「なななななにも、何も・・っ!」

「大アリ、だろ?」



「・・・・・で、す・・」


よかったじゃねェか!明るい声を響かせた山田先生がバシバシと私の肩を叩いて、私は項垂れながらぽつぽつと昨日の出来事を言葉にしていく




「・・もちろん一晩限りの関係なので、ご迷惑にならないよう割り切るのですが、」


「よーくわかるぜ?・・ってハァ!?」


「イレイザー先生は、何というか、私を気遣って下さるんですけど」

それがとても申し訳なくて、なんて
聞こえのいい上辺の言葉を呟いて視線を上げると、サングラスをずらし大きく開かれた目がこちらを見つめていた



「・・アイツが今日、最大級に不機嫌な理由はコレね」


「!やっぱり不機嫌なんですね」

「そーゆー意味じゃなくてよ・・いや、オレが言うことじゃ無ェか」


山田先生が溜息をつく姿なんて初めて見たなぁ、なんて
困ったように下がった眉をぼーっと眺めた私は「そろそろ戻りますね」と告げると重い腰を上げた









片付くはずのないデスクの上、せめてもの思いで書類をひとつのフォルダに纏める

待ちに待った終業のベルが部屋の中だけに控えめに響くと、私は誰よりも先に荷物をまとめて事務室を出た


外靴に履き替え足早に門に向かって歩き出すと奥に見える教師寮、
憧れの彼に想いを馳せながら毎日のように見上げていたそれを、今日は視界に入れないようにと地面を見つめて歩く








私がオフラインになったことに彼は気がついただろうか






なんて



一夜を共にしたくらいで自信過剰も甚だしい、吐き出した白い息は薄暗い空に悲しく消えた
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