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《ヒロアカ短編集》角砂糖にくちびる

第1章 混じり合うそれに幾つかの◉白雲朧


橙のような赤のような紫のような
混じり合うそれに幾つかの白が浮かぶ

大の字になって見上げた空に今の気持ちが重なった


「ごちゃごちゃしてんなー・・」

柔らかい髪の感触が残る指先で唇に触れると
それだけで頭がおかしくなりそうで

なのにひざしの顔見た途端逃げるなんて
俺は何やってんだ


「どっちも大事なんだよ、選べねェよ・・」

何の解決にもならない言葉を呟いて
大きな溜息をついた



「・・山田くんと張り合えてるんだ、私」


「当たり前だろ、じゃなきゃこんなに悩まな・・

 ・・って、え!?!?」

ガバッと飛び起きると少し離れたところに
座り込む彼女の姿

「い、いつから」

「口触って赤くなってたくらい、から、かな」

目を伏せた彼女に恥ずかしさで言葉も出ない

「ひざしは・・」

「先に帰ってもらったの」

側に座り直した彼女がじーっと俺を見つめる
その視線が外れると言いにくそうに話し始めた







「山田くんと私ね、本当は何もないの」

俺の気を引きたくてひざしと付き合っているフリをしていたと、彼女が目を泳がせる

「ごめんなさい!」

「つ、付き合ってねェの・・!?」

目の前で気まずそうに頷いた彼女が
誰のものでも無いと思うと安堵で力が抜けた

「ひざし演技うますぎだろ・・」

「怒ってる、よね」

「怒ってねェよ」

元はと言えば俺が悪いんだから


混乱してんの、そう言って細い肩を掴むと
紅くなった顔を至近距離でまじまじと眺める

「本当にひざしの彼女じゃ、ないんだな?」

「、うん」

「じゃあ俺の彼女ってことでいいよな」

俺、めぐの彼氏になりたい
祈るようにそう呟くと見開かれたその目が潤んだ



「めちゃくちゃ好きだ」

「そ、そんな怒った顔で言われても」

「無理して笑ってたからこの顔しか出来なくなった」

そう言いながら吹き出した俺に、彼女がつられて笑う



俺の気を引きたくて、なんて


ああもう


「世界で一番可愛い」

「急にそういう事言うのやめて・・」

「すっげぇ好き」


髪に指を差し込んでくしゃりと撫でると
気持ち良さそうに彼女が目を細めて
照れ臭そうに弧を描いた唇に自分のそれを重ねた


「そういや、俺まだ好きって言われてない」

「今まで散々言ったもん」


「・・・すいませんでした」

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