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《ヒロアカ短編集》角砂糖にくちびる

第9章 ふわふわなんかさせない◉相澤消太



当然のように繋がれた手、それは指の感触を一本一本確かめるようにゆっくりと絡んでいく
でも相澤くんは前を向いたまま何も言ってはくれなくて、私は彼をちらりと見上げると小さく抗議をした



「あ、相澤くん、あ、あの、手・・!」


「嫌だったら離して」

「い、嫌とかじゃなくて、あの、」

「その答えは足りないって言っただろ」


絡んだ長い指は誘うように私の甲を擽って、男の子らしい少しかさついた感触にまたどうしようもなく胸が騒ぐ
時折私の指先を温めるようにぎゅっと握ると、相澤くんは満足そうに呟いた



「寒いけど、悪くない」

「こんなの、心臓もたないよ・・!」


「あいつらとはイチャついたくせに」

俺とは嫌なのかよ、拗ねたようなその口ぶりに胸がきゅんと苦しくなって、思わず握り返した大きな手

驚きに一瞬目を見開いた彼の黒髪からは赤くなった耳が覗いて、下を向いて態とらしく吐かれた溜息が白くなって消える



「い、嫌じゃないもん」


精一杯の反抗、されるがままの自分が情けなくて強気に相澤くんを見上げたつもりが、彼の視線は初めて感じるほどに熱くて思わず間抜けな声が出てしまう



「あ、相澤くん、?」


「・・好きだ」

「え、っ、今なん、て、」

「好きだ」

ずっと前から、絞り出すようにそう呟いた彼がまたきつく指を絡めて
先ほどまでかさついていた掌にはじわりと汗が滲んでいる


「そ、そんなの今初めて聞い、た」

「そりゃそうだろうな」

「え、う、うそ」

「意識されてないのは知ってるよ」

でも俺諦めないから、彼はそう言うと私を覗き込むようにしてゆっくりと顔を近づけて

ちらちらと雪の舞う寒空の下、寒さですっかり赤くなった彼の鼻先がすり、と私のそれに触れた







「・・・キ、キスされるのかと思った!!」


驚きのあまり後ずさった私の手を再び引き寄せると、相澤くんは真顔のまま私の口元を見つめている


「していいならするけど」

「ま、まだ、だめ・・!!!」


「まだ、ね」


さっきよりはマシだな、なんて満足そうに微笑んだ彼から目が離せなくて
もう何度目か分からない甘い音は、私の身体をまたいとも簡単に熱くしていった
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