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《ヒロアカ短編集》角砂糖にくちびる

第9章 ふわふわなんかさせない◉相澤消太



静かな教室、また相澤くんと二人きりになってしまったと、だんだんと速まる鼓動を誤魔化すように椅子から立ち上がると
窓の外にちらちらと舞い始めた白いものが見えた


「わ・・っ、雪降ってる!」


思わず窓に駆け寄ると、すぐ後ろに相澤くんの近づく気配がして
背中に触れそうなその距離にまた顔が熱くなる
頭上から聞こえた声に身を硬くすると、彼が微かに笑ったような気がした


「屋上行ってみるか」

「う、うん!そうだね、せっかくだし!」






屋上の扉を開けると、はらはらと舞う雪がゆっくりと頬に当たる
暖房で火照った頭を冷やしてくれるそれは思っていたよりもずっと心地が良くて、笑みが溢れた



「すごい、綺麗・・!」

「・・さむ」

まだ屋根の下にいる相澤くんは寒さに小さく悪態をついて、それでもゆっくりとこちらに足を踏み出したようだ

階段を駆け上った後の熱い吐息が澄んだ空気に白く浮かんで、逆上せた身体を徐々に癒していく





「・・さっきの、わざとだから」


ぼそりと呟かれたその声に振り返ると、相澤くんの手には先ほど山田くんが使っていたネコちゃんのペンが握られていた


「お揃い、嫌だったら捨てて」


「い、嫌じゃないよ!?」


「・・・・その答えじゃ、全然足りない」


不服そうに眉を顰めた彼が少しずつ近づいて、巻いていたマフラーを外すと柔らかくてあたたかいそれがふわりと私の首元を包んだ


「それ、巻いといて」

「えっ、あ、ありがとう」


仄かに残る温かさが、まるで彼に抱きしめられているようで落ち着かない
ほかほかしている私とは対照的に、横で鼻を啜る相澤くんはどう見ても寒そうで、こんなことなら自分のマフラーを持ってくるんだったと反省が募る


相澤くんはいつもこうだ、
無愛想に見えて優しさで溢れている彼は、時にこちらが気恥ずかしくなるほどに甘くて
現に今だって、寒いのは大の苦手なのに私に付き合ってくれているのだ



「相澤くん、優しいね」


「誰にでもじゃない」


寒いな、そう呟いて突然ぎゅっと握られた手はそのまま彼のポケットへと誘われる
あたたかな温度の中で指が絡められるとマフラーから香る相澤くんの匂いにまた身体が熱くなっていった
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