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《ヒロアカ短編集》角砂糖にくちびる

第9章 ふわふわなんかさせない◉相澤消太



「WHAT!?!?」

「え、あ」

目の前には無表情でしゃがんだ相澤くん、山田くんの持つ画面に触れたその指先はまだ「停止」の上にある


「HEYそりゃないぜェ!?!?」

「あああいざわくん・・!!」


「・・さっきから俺のこと完全に忘れてんだろ」


じとっと私を睨んだ相澤くんが不機嫌そうに口を歪めて、一気に現実に引き戻された私は気恥ずかしさで叫び出しそうになる
慌てて山田くんの横から立ち上がると、目の前の相澤くんが少しだけ笑った



「だとしても今止めンのはダメでしょうが!」

「知らん」





なんだか今日は白雲くんも山田くんも少し変だ、
想像していたクリスマス会はもっと他愛なくて、いつも通りお腹が痛くなるほど笑いころげているはずだったのに

お腹が痛くなるどころか、うるさいくらいに甘く響くのは胸の音
深呼吸で気持ちを落ち着かせながら、作りかけのケーキの前に椅子を寄せる
白いクリームの上に苺を規則的に置いていくと、ほんの少しだけ頭が冴えていく気がした



「山田、お前職員室に呼ばれてたぞ」

どうせ放送も聞いてなかったんだろ、そう言った相澤くんが上のスピーカーを指差すと山田くんは顔を顰めて溜息をついた


「はぁーーーオレ毎日呼ばれてね?」

「それだけ注意散漫なんだろ」


軽く舌打ちをした山田くんは恨めしそうにスピーカーを睨みつけると、私にウインクをして教室の扉に手をかける


「めぐ、いい子で待っててくれよな!」

「ふふ、ケーキの仕上げしておくね」


「相澤おまえ、変な気起こすなよ!?」

「お前と一緒にするな」

しっしっ、と手で払った相澤くんに苦い顔をして、山田くんが教室を後にする
彼の口ずさむメロディが廊下に響き、軽快な足音はゆっくりと遠ざかっていった




「・・ケーキ、大丈夫そう?」

「うん!もうすぐ出来るよ」

穏やかに微笑んだ相澤くんは床に置かれていた鞄を片手に此方へ寄ると、ゆっくりと椅子を引いてそこに腰掛けた


「あのさ」

「うん?」


「・・これ」


テーピングの施された右手が私に差し出したのは小さな包み
赤い包装紙には雪の結晶が描かれ、深い緑色のリボンがかかっている
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