第1章 混じり合うそれに幾つかの◉白雲朧
「好きなんだろ、ひざしのこと」
「・・そう、だね」
そんな曖昧な答えにも俺はしっかりと傷付いて、想いを更に自覚した自分に腹が立つ
今にも溢れそうな涙に気付かないなんてどう考えたって無理があるのに、それでも俺は気付かないフリをして彼女に笑いかけた
「今度、惚気聞かせてくれな!」
大丈夫、まだちゃんと笑えているはずだ
今その涙を拭ってしまったら
この気持ちを伝えてしまったら
大事な親友も彼女も傷付けてしまうから
全部俺が悪い、中途半端なことをした報いだ
「・・山田くんは、
私の気持ちをちゃんと受け止めてくれるから」
何度伝えても分かってくれなかった白雲くんとは違う、
そう悲しそうに微笑んだ彼女の目から一つ、雫が落ちた
「だから私、山田くんを好きに、なる」
「・・そーかよ」
思わず口走った言葉に彼女の頬をまた涙が伝う
笑ってここを切り抜けろ、
今までずっとそうしてきたように
そう自分に言い聞かせると、握りしめた手に爪が食い込んだ
「だから安心してね、」
指先で涙を拭った彼女が力無く微笑んで、涙の跡が差し込む夕陽にきらりと光る
本当にこれで終わりだ
「白雲くんのことはもう・・」
今まで何度も愛を伝えてくれたその口から、終わりの言葉が紡がれる
それを聞いていられなくて、結局俺は彼女の腕を掴んでいた
「あのさ、俺・・!」
何やってんだ
今更こんなことしたって、遅いのに
気付かないフリが全部水の泡だ
それでも俺は、その身体を強く引き寄せて
「・・っ!」
“・・もう、ちゃんと諦めるから”、
彼女がそれを言い終わらないうちに、その唇を強引に塞いだ
「白、雲くん」
ゆっくりと顔を離すと
細い肩から微かに香ったひざしの匂い
だめだ、全然笑えていない
「めぐが好きだ、ごめん」