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《ヒロアカ短編集》角砂糖にくちびる

第1章 混じり合うそれに幾つかの◉白雲朧


慌ただしい一日を終えた放課後、
教室の前を通ると彼女が帰り支度をしているのが見えた

めぐは一人きり、ひざしの姿は無い


我ながら何がしたいのか、
迷いなく彼女の元に向いた足に苦笑が漏れた


「めぐ、なんか久しぶりだな!」

「白雲くん・・!」

ひざしと上手くいってるみたいで何より!
なんて能天気に笑って、自分が嫌になる



「ひざし、優しいだろ?」

「う、うん」

紅くなった彼女が俯いて、この間まで俺に向けられていたその表情に胸が苦しくなった

こんなに、可愛かったっけ

そんなことを考えながら、この自分勝手な想いが大きくなっていくのを感じる


早く、断ち切らないとな

俺は満面の笑みを作って言葉を発した


「二人見てたらさ、
 なーんか俺も彼女欲しくなっちゃって!」

ナンパでも挑戦すっかな!、そんな風に適当なことを垂れて笑った俺の前で彼女が目を見開いて言葉を詰まらせた


「えっ・・」


少しずつ潤んだそれが、揺れて



「めぐ・・?」

予想外の反応に心臓が嫌な音を立てる
汗が背中をつたうのを感じて無意識に首の後ろを押さえた


「そ、そうなんだね、」






ああ、本当に鈍感ならよかったのに

胸に渦巻いた淡い期待に体が熱くなったところで
もう遅い、この想いは伝えられない

めぐはもう、ひざしのなんだから



「・・素敵な彼女が、できるといいね」

絞り出された言葉にどれだけ胸が痛くても
もう、




窓から吹き込んだ風がカーテンを靡かせ
彼女の髪をふわりと揺らす
それに触れようと上げかけた手を下ろして
力一杯拳を握りしめた


「おう!できたら必ず報告するから!」

ニィっと笑っていつものように真っ直ぐに彼女を見ると、潤んだその目がまた揺れて


「う、うん・・楽しみに、してるね」



大きな瞳に溜まっていくその涙の意味も

それを嬉しいと思ってしまう自分の気持ちも



今更わかったって、遅い

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