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《ヒロアカ短編集》角砂糖にくちびる

第8章 優しく迷子の手を引いて◉飯田天哉


週に一度の委員会、今日も今日とて飯田くんは爽やかに場を纏め上げて
黒板に走る軽快なチョークの音を聞きながら、凛としたその声に耳を澄ませる

回を重ねるほど、彼に向ける自身の視線が熱いものになっていることに私は気づき始めていた





「薬師くん、少し時間を貰えるか」

委員会終了後、教室の後方で後片付けをしていた私のところへ
教壇から降り立った彼が爽やかに駆け寄った


「飯田くん、どうしたの・・?」


その姿はまるで白馬の王子様が迎えに来てくれたみたいだ、なんて

シンデレラが王子様に見つけてもらった時はきっとこんな気持ちだったに違いないとさえ思う


数秒のざわめき、他の生徒たちが好奇の視線を投げる中、飯田くんの瞳には私だけが写っていて


「君に話したい事があるんだ」


いつだって堂々としている飯田くんが差し出したその手に、私はそっと自分のそれを重ねると
火照り始めた顔で黙って頷くことしかできなかった
















敷地内のベンチ、俺は自動販売機で二人分の缶ジュースを買うとそのうちの一本を彼女に差し出した


「ありがとう、!」

「礼には及ばないよ」


触れた指先から広がった熱、想いを認めてしまえば清々しいほどにそれは単純で、当然にそこにあったように感じる

彼女を前にしてもなお取り乱すことなく平静を保てているのは、
この想いをどう伝えるかと夜通しまとめた紙の切れ端を胸ポケットに忍ばせているからだろうか
いや、それは間違いなく友が背中を押してくれたお陰だろう



夕刻でも充分に暑い陽の下、冷たい雫を付けた缶をその手に彼女の喉が鳴る


「ん、とっても美味しい、」

目を細めてはにかんだその顔が照れくさそうに下を向いて、
まだ缶の封を開けていない己の喉がごくりと鳴るのを感じた



「それで・・、話したいこと、って?」

ちらりと此方を見上げた彼女が少しだけ目を泳がせる
胸に渦巻く淡い期待に必死に蓋をしながら、俺は深呼吸して空を見つめた
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