第7章 TGIF!◉相澤消太
零れるその涙の意味は、拒絶なのか
彼女の頬をつたったそれがシーツの上で染みを作って
「相澤くんは、ダメ」
「理由は」
押し倒したその身体を見下ろして手に指を絡めると、目尻からまた一筋光るものが落ちる
「別に山田に抱かれたいわけじゃないだろ、
誰でもいいなら俺でもいいよな」
「ダメなものはダメ」
睨み返すその表情ですら、溢れた想いを煽る材料にしかならない
我ながらとんでもない状況だな、と汗が滲んだ
「お願い、どいて・・」
「辛いならその度に俺が抱いて忘れさせてやる、
他の男じゃなく俺を頼れ」
「相澤くんじゃ、だめなの」
頑なに俺を拒否するその唇を塞いで言葉を奪う
何度か啄むと漏れた甘い吐息が俺の鼓膜を揺らした
「嫌がるなら、ちゃんと嫌がれよ」
「やだっ、て・・っ!」
「お前が泣くのは嫌いじゃない、逆効果だ」
唇を重ね舌を滑らせるとその眉間に皺が寄って
零れるその涙を指で拭い、彼女の髪を梳いた
「本当に、やめて・・お願い、」
嗚咽混じりのその声に胸が掴まれて痛む
噦りあげる音が静かな部屋に響いて
こんな顔が見たいんじゃないのに
「・・・悪かった」
ベッドの端に腰掛け溜息をつくと、まだ彼女を求めて鳴り続ける心臓の音
それを鎮めようと目を閉じた俺の耳に彼女の小さな声が届いた
「私が本当に忘れたいのは、相澤くんだから、」
酔った勢いにも
笑い話にもできないから、だめなの
「大事な人、だから」
消えそうな声に思わず振り返ると、ベッドの上で膝を抱えた彼女が下を向いて鼻を啜る
言った側から後悔に溢れた声がその口から零れて
「ほら、そうやってまた、何も言ってくれないし」
そんな気は無いって、ちゃんとそう言ってよ、
涙混じりの言葉が暗い部屋に溶ける
頭の中を巡る葛藤と言い訳すら白旗を上げて
勝てやしない、
そう自覚し少しだけ軽くなった心の求めるまま、その手を引き寄せ腕の中に閉じ込めた
「え、あの」
お前はいつも、幸せになってくれない
俺みたいな奴をまだ想ってるなんて
どう考えてもアホだろ
俺のせいにしてんじゃねェよ