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《ヒロアカ短編集》角砂糖にくちびる

第7章 TGIF!◉相澤消太



「オマエ・・いい加減帰れよ・・、」

めぐの気が変わっちまうだろ、そう呟いた山田くんは今にも寝そうな顔をしている

「目、半分閉じてるね」

「まだだ、ダメ押しの一缶」

これでコイツは朝まで確実に寝る、そう自信満々に断言した彼はとても楽しそうで


それとは反対に私の前には氷が浮いたお水だけ、
「お前はもう飲むな」と相澤くんに凄まれ渋々大人しくしている

こんな時間がずっと続けばいいのに、と冷たいお水を流し込んだその数分後、幸せそうな寝息を立てて山田くんが床に転がった


「あーあ、最高の金曜日失敗だね」

「知るか」


大きめのバスタオルを探し山田くんにそっと掛ける
ソファのクッションを枕代わりにすると、身を捩った山田くんが女性の名前を寝言で呟いた





「・・お前、もう少し自分を大事にしろ」

その静かな声は、明らかに怒りを孕んでいて
このまま彼に幻滅されたら少しは楽になれるだろうか、そんな想いが頭をよぎる


「ご心配、ありがとう」

耳に響いたその声は我ながらひどいもので、ぼやけていく視界に唇を噛んだ








もし俺が此処に居なかったら
彼女は大人しく山田と寝ていたのだろうか
想像するだけで虫唾が走る


「ご心配、ありがとう」

どこか冷めたその声はこれ以上介入するなと俺に伝えていて、腹の底に苛立ちが募った


「鍵、出せよ」

ここの合鍵持ったままだろ、そう言って彼女の鞄に目を遣ると消えそうな声が部屋に響く

「・・今度、山田くんに返しておく」

「俺から返すから、今出せ」

苛立つのを隠さず声をあげると、彼女の瞳が揺れた

「相澤くんには、関係ないでしょ」



震えるその声に、必死に保っていた何かが切れるのを感じる
抑え込み蓋をしていた想いが怒りになって溢れて


「・・誰でも、いいんだよな」

「え、ちょっと、!」

細い手首を掴んで彼女を立たせると、寝室へとその腕を引く
驚きに声も出ないその顔を睨みつけながら、後ろ手に鍵を閉めた


「相澤くん、何考えて・・」

「忘れたいんだろ」

月明かりが差し込んだ暗い部屋、一層儚く見えるその姿に小さく息を吐いて
このまま消えてしまいそうなその身体を抱き寄せ、暴れる彼女の腕を押さえた


「自暴自棄になる位忘れたいなら、俺が相手してやるよ」

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