第1章 混じり合うそれに幾つかの◉白雲朧
「・・俺のこと好き、って言ってたのに」
「鈍感なフリしてた奴がよく言うよ」
驚いて言葉に詰まると真正面から無機質な視線が刺さった
「ショータには敵わねェなぁ・・」
気付かないフリをするたびに
何度でも真剣に伝えてくれる彼女が可愛くて
付き合うとか面倒なことよりずっと
その距離感が心地よくて
「俺、もしかして最低・・?」
「今気づいたのか」
彼女の気持ちを弄んで、それでも
ずっと俺を好きで居てくれるだろう、なんて
「先週も不発だったって泣いてたぞ」
「え・・泣いて・・」
「嘘」
今その嘘はやめてくれよ、と項垂れると
立ち上がったショータがにやりと笑った
「まぁ、後悔しても遅い、
アイツはもう山田のなんだから」
殴り合いでもするなら審判してやるよ、そう言って笑い去っていく後ろ姿を見送る
バタン、と音を立てて扉が閉まると同時に手足を投げ出して視界を真っ青で埋めた
「ねぇ、いつまでやるのこれ・・?」
右側にぴったりとくっついた山田くんが私を覗き込んで
「え?決めてないけど?」
「決めてないけど、じゃない・・!」
くっつかないで!と思い切り突っぱねると山田くんが口を尖らせた
「このままホントに付き合っちゃう?」
「ちゃわない!」
「シヴィー!」
オレ結構真剣かもよ?、そう言って立ち上がった山田くんに不覚にも胸が鳴った
「冗談でそういうこと言わないで・・!」
「何、キュンとしちゃった?かーわい」
山田くんを好きになれたらそれが一番幸せかも、一瞬そう思ってしまった自分が嫌になる
優しくて明るくて、大切にしてくれて
どんな些細なこともすぐに気付いてくれる
山田くんの彼女は間違いなく幸せだろうな、と校内限定の偽彼女ですら実感してしまっていた
「へいへい、いいですよー
めぐが朧一筋なのは分かってっから」
あの鈍感、どうやって振り向かせるかまた作戦会議だな!
そう明るく笑った彼に今日も背中を押されているのは間違いなくて
「いつも、ありがとう」
そう言って私が笑うと、山田くんが一瞬だけ眉間に皺を寄せた
「絶対オレの方がイイ男なのに」
「ふふ、それは私もそう思う」
分かってんなら救いようがねェな!そう言って彼はまた大声で笑った