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《ヒロアカ短編集》角砂糖にくちびる

第7章 TGIF!◉相澤消太



「アメニティ、完備・・」

思わずそう呟いて笑いを堪える
お風呂を借りると伝えると山田くんから渡されたのはパジャマと下着類、化粧品は洗面所に置いてある物を好きに使っていいとのこと

どうせ全部捨てるんだからよ、そう言ってリビングですでに数缶空けていた姿を思い出して苦笑が漏れた


「山田くん、色々お借りしました〜」

「・・・」

「あれ、なんか変だった・・?」


無言で私を見つめた山田くんが深く項垂れる
その横で鯣を口に咥えた相澤くんが缶を開けた

「いや、色々思い出して・・」

「気にするな、放っとけ」

「下着もアイツのだもんなァ・・抱けるかな・・」

「抱かせるつもりは無い」

差し出された缶を受け取り席につく
喉を通る冷たさが心地よくて幸せな気分になった


「相澤くんっていつも缶開けてくれるよね、
 ありがとう」

「え、そうなのショーチャン」

「るせぇな、気のせいだろ」


照れたように顔を顰めた彼に胸がきゅんと鳴って、何年経っても消えないこの想いにまた小さな絶望を重ねていく

想いを打ち消そうと捥いて数年、今までの恋が上手くいかなかったのはきっと相手のせいじゃない

私が、ちゃんと好きになれないせいだ


その割にフラれる度落ち込んではいるのだけれど


このままだと婚期逃すだろうなぁ、そう溜息を吐いて目線を前に戻すと捕縛布でぐるぐる巻きにされている山田くんが目に入った


「相澤くん、何して・・」

「俺が風呂の間、危ねェだろ」

「いやここオレの家!何してくれてんの!
 てかめぐの後はオレでしょ普通!」

山田くんの叫びを完全に無視してすたすたとお風呂場へ消える相澤くんの姿に思わず吹き出した


「何なのアイツ!?めぐのお父サンかよ!」

「ふふ、本当そんな感じ」


僅か数分で戻ってきた相澤くんが山田くんを解放し、今度はお風呂場へと引き摺っていく
二人の掛け合いを眺めていると学生時代に戻ったようで、心が満たされていくのを感じていた

「手の掛かるお友達だね」

「ったく、お前もだよ」

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