第7章 TGIF!◉相澤消太
「めぐ・・!オレの相手してくれんの・・?」
ツラい者同士仲良くヤろうぜ、向かいからおしぼりを渡した山田が彼女の頭を撫でると
下を向いた顔が小さく頷いた
「何言ってんだ、駄目に決まってんだろ」
「オレはめぐに聞いてんの!」
「二人と居ると元気出る・・、なんか泣きそうになってきた」
「もう泣いてんだろうが」
目元を押さえる手に山田がべたべたと触れて
立ち上がり彼女の横に座り直すとその肩を抱いた
「めぐが好きだぜ、超幸せにする」
「うう、その言葉、今すごい沁みる...」
「酔っ払い共が・・!」
薄暗い照明でもわかる程、紅く染まったその顔
暑そうに襟元を伸ばし脚を組み替えると山田の喉が鳴った
「気が変わらないうちに、オレん家行こ?」
「お前マジでプライドもクソも無いな」
目の前のだらしない顔を思い切り睨みつけると
そうだね、と彼女が笑う
濃くなっていく部屋の空気に耐えられず襖に手を掛けると、申し訳程度に廊下の空気が流れ込んだ
「こんだけ飲んでんだ、コイツ明日憶えてねェぞ」
帰るなら今だろ、そう言って脅すと彼女が合鍵を鞄に仕舞った
「お前・・」
「憶えてない方が、お互い好都合かも、」
どうせ今日一人では寝られないから、そう言って儚く笑ったその顔に釘付けになる
「・・それなら、俺も連れていけ」
朝まで愚痴でも何でも付き合ってやる、そう言うと潤んだその目が見開いて
簡単に速くなった胸の音が煩くて、それを掻き消すように特大の溜息を落とした
「はァ!?なんでオマエまで来んの!?
三人でヤる趣味なんかねェよ・・!」
「私はいいよ、二人でも三人でも」
「おい、勝手に自暴自棄になるな・・!」
相変わらず無駄にいいとこ住んでんな、そう呟いて部屋に上がると至る所に残された女の居た形跡
「アメニティ完備、って感じだね」
「お前笑ってる場合か」
山田なら幸せにするかもしれない、なんて一瞬でも思った俺が馬鹿だったと前言を即座に撤回し彼女に向き直る
「先に風呂入ってこい」
「へ?!えっ、あ、あの」
「変な意味じゃねェよアホか・・!」
真っ赤になったその顔につられ吐き捨てると
ビニール袋から酒とつまみを取り出す
「朝まで愚痴大会やるんだろ」